2/154
漫画の様な世界
古いトンネルのちょうど中心。
非常灯の下。
身長180センチの俺の胸元あたりにある、青いボタンを人差し指で押し込む。
指紋認証と連動したボタンが沈んだ瞬間、非常灯の真ん中に鋭い線が走った。
線は左右にきっぱりと割れる。
うるさい音は一切ない。とても静かだった。
人が三人は並んで歩けるほどの隙間がトンネルの壁面に浮かび上がり、奥に地下へと続く階段が見えた。
───そう、何を隠そう。
ここが、俺が務める【内閣特命情報管理庁】への秘密の入口だ。守秘義務があるため、家族にも、友人にも言えないこの特殊な入口への儀式……
陽気な性格をしている俺の母親が知ったら、きっとこう言うだろう。
「あんた、ハリーポッターか、ミッションインポッシブルの見過ぎじゃないの?」と──
何を隠そうこの現場を最初に見たときは、俺も有り得なさすぎて半分笑ったものだ。
でも人間ってのは不思議なもので、毎日繰り返していると非日常が日常になってくる。




