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世界最終戦争~CPO6~  作者: 胡蝶 蘭
第三章【地獄へようこそ】
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狙われた九条怜

 


「待ってください……!どうやらAIが、対象者に直接指令を出しています!解析したところ……内容は『❝内情庁❞を壊せ。ターゲットは、目の前の一貫性の無い男だ』という指令です!」



 すぐに理星の声が、緊迫したものに変わる。



「九条さん、今すぐその場を離れてください!貴方は今、AIにとって最大の脅威です!AIは確実に、あなたを最優先排除ターゲットとして認識しました!」



 理星の警告が聞こえた、その瞬間だった。


 アルコールで酩酊していたはずの男が、信じられないほどの敏捷性で九条に向かって突進してきた。


 その目には、憎悪や狂気はなく、ただ冷たい命令だけが宿っている。


「邪魔だ!最適化を邪魔する奴は、排除する!」


 男は、酔っぱらいの喧嘩ではなく、訓練された兵士のような、鋭い打撃を九条の顔面に放った。


 九条は反射的にそのパンチを受け流す。



 やはりだ。チップが神経系統を乗っ取り、無駄のない動きを作っているんだ。

 これで歴代の容疑者達が体形や性別に関わらずあれだけの犯行を何故実行できたかが理解できた。





 ──【スカウトされたんだから通わなくても良いじゃないですか】と散々部長にゴネた警察学校。


 規則によりどうしても通わないといけないとの事で、イヤイヤながら半年だけは通ったが、その時に教えてもらった技が今になって生きるとは正直思ってもいなかった。


 相手の突きを利用して体重を移動させ、その体を捻り上げた。

 そして、男の耳元に狙いを定める。


 男がバランスを崩し、九条に組み付いた瞬間、九条はポケットに入ってあるゴールドのタイピンを取り出し電光石火の速さでピアス穴の奥の黒い点に向けて力一杯差し込み、チップを抜き取った。



「グアッ…!」


 九条がチップを抜き取った瞬間、男の体からすべての力が抜け落ちた。


 男は床に崩れ落ち、再び極度の飲酒による酔っ払いの顔に戻った。そして、口元から白い泡を吹き、意識を失う。


 九条は、抜き取ったチップをティッシュに包み、素早く上着のポケットに放り込んだ。

 そして、スマホを取り出し、部長に電話をかける。



「あ、部長?俺です」


 電話の向こうで、沢田部長の大きな声響いた。


「九条!お前、空港で何があった!?緊急警備隊が向かっているぞ!!大丈夫なのか?!」


 九条は、パニックになりかけている周りの人々に軽く頭を下げながら慣れた手つきで眼の前で倒れている男のカバンを漁る。


 特にこれといって今回の事件の手がかりになるものは無さそうだった。

 ……完全にチップのみで操られていたということだろう。



 未だにハァハァと大きな呼吸で焦っている沢田部長とは、対局に至極呑気な声で答えた。


「大丈夫です。敵は確保しました。いやー、まさか半年だけ通った警察学校の技がこんなところで役に立つとは。これからは部長に頭が上がりません」


「チップは回収しました。証拠品として、ニューヨークへ持っていきますよ」




 九条は、そこで通話を一方的に切り、パスポートとチケットを握りしめた。


 搭乗ゲートのアナウンスが、最終呼び出しを告げている。




「デルタ航空、ニューヨーク行き、最終呼び出しをいたします」



 九条は、機内へのブリッジへと走り出した。




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