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マルセルが継ぐ思い
目が滲んで、読めなくなった。
手紙のインクが俺の涙で滲む頃、マルセルが俺の袖を引いた。
「……サラが僕に言ってたよ。」
「…………え?」
「❝僕のママは返ってこないけど、魂は命の星になって、君に降り注ぐ。
君が強く生き続ける限り、ママの魂は君と一緒にある❞って─」
幼い声が、俺の心にまっすぐに響いた。
サラの言葉を、最後にこの子が受け継いでいたのだ。
俺は何も言わずにマルセルを強く抱きしめた。
俺達は人目を気にせず、大粒の涙を流す。
雪が肩に降り積もる。
──冷たいはずの世界が、ほんの少しだけ温かく感じた。




