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世界最終戦争~CPO6~  作者: 胡蝶 蘭
第十七章【ルーブルの花束】
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ルーブルの花束


 ──パリ、冬の朝。


 空は鉛色に曇り、セーヌ川を渡る風は骨の芯まで冷たかった。



 初めてのフランス・パリだ。


 だけど、飛行機を降りた瞬間、空気の匂いがアメリカともハワイとも違うと分かった。



 フランスの空気には知性とユーモアと、そしてセンスがあふれている。まるでサラの息遣いが、まだこの世界に残っている様だった。



 到着ロビーの出口で、ひとりの青年が立っていた。


 彼は黒いコートに身を包み、淡い金髪をしていた。隣で手を繋がれている八歳くらいの男の子も、同じ様にブロンドヘアを靡かせていた。



「……九条さん、ですね。」


「ああ。あなたが──」


「サミュエル・ルブラン。サラの弟です。今回は連絡を下さり、ありがとうございました。サラからもよく話は聞いていました。」



 短く握手を交わすと、その隣で小さな手が俺の指に触れた。



「サラ姉ちゃんの彼氏?」


 俺はそんな純粋な問いに『ああ、そうだ』と答えてから、少年の頭を撫でた。



 ──サラからサミュエルの苦労もこの子の母親の事も聞いている。


 サラと、そしてサミュエルの妻も、犯人は違えど命を奪われた。



 それでもサミュエルは穏やかに微笑んでいた。


 その笑顔に、かつてサラが言っていた「家族を守る」という強さを見た様な気がした。



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