いっその事、死んでしまいたい
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その夜、俺は酒を浴びるように飲んだ。
元々、酒に弱い俺だ。ここまで飲めば致死量にもほど近い。いっその事、このまま死んでしまいたかった。
何故、人は望んだ時に限り、そう簡単に死ねないのだろう。
グラスも注ぐ手も震えて、半分以上はテーブルにこぼれた。
窓に映る町の灯りがぼやけて見える。
……いや、違う。涙が、滲んでいたのかもしれない。
どいつもこいつも笑わせてくれる。
俺達は何のために命を張って戦っていたんだ?何の為にドミトリは散ったんだ?
結局、AIの言っていた❝選別❞の方が正しかったんじゃないのか。
宗教テロなんていう自分の価値観を他人に押し付けるという、人間の持つ無駄で醜い感情が、また命を奪った。俺の大事な人の命までもを──
【ドンッ!!】
思い切り机を殴った。
低い音が部屋に響き、それと同時に自らの拳に血がにじむ。
グラスに入っていたお酒が揺れて、今にもグラスから漏れそうになっていた。
「あの時、AIを壊さなければ…」
「第五の柱の理念にちゃんと耳を傾けていれば…」
「サラはまだ生きていたかもしれない」
俺は自分の心の中に浮かんだ闇を出すかの様にして、ただひたすらに机を殴る。
机は血と涙と鼻水と酒が混じってベトベトになっていた。




