145/154
愛しのSARA
終演後、劇場を出ると、外は粉雪が降り始めていた。ライトアップされた通りに、白い光が滲む。
彼女は小さく息を吐きながら、上を見上げる。
「……何だか、怜とクリスマスに何も気にせず此処に居る事が奇跡みたい。」
「ああ。世界が終わらなかったご褒美かもな。」
彼女は首を傾げて、くすりと笑う。
「それを聞いたらドミトリは怒るわよ」
「だな、アイツが一番望んでた様なシーンだからな、今のこのシーンは」
ドミトリ──お前も今そっちで幸せにやってるか?
「ねえ、怜。もしも世界がもう一度危機に陥ったら、そのときもあなたは戦う?」
「わからない。でも……サラが泣かない為なら、何度でも戦うさ。」
短い沈黙だった。
サラは何か言いたげに唇を動かしたが、そのまま笑って歩き出した。




