突然の愛の誘い
作戦会議が終わり、メンバーが各自の準備のために席を立とうとした、その瞬間だった。
俺は意を決して、書類を大事そうに持ちながら会議室を後にしようとしているサラに叫ぶ。円卓から会議室のドアまで……。叫ばなくても聞こえたはずだが、もう遅い。
「サラ!」
サラが驚いて顔を上げると、俺は一瞬躊躇してから、チーム全員がいる前で、続けた。
「……あのな。」
「この作戦が終わったら、どっか、二人で遊びに行こう」
その言葉には『無事に帰ってきたら恋人としての時間を過ごそう』という意味が含まれている。
少し日本人らしさを前面に出した分かりにくい言葉だったかな──そう後悔したのもつかの間、サラの顔が一瞬にして赤く染まったのを見て、俺は少し安堵した。
キムが俺の言葉を聞いて「おいおい、ここでかよ」とニヤつきながら、ペン回しを始める。
理星はその言葉に頷きながら「九条リーダーの行動は、AIの予測を完全に超えてきますね」と淡々と嫌味とも取れる分析をした。
ファイサルは皮のバッグを持ちながら、赤める頬を両手で包むサラの肩を優しく叩き何やら声をかけてから会議室を後にする。
きっと「ごちそうさま」なんていう、更にサラの顔が赤くなる様な言葉を発したんだろう。
ライリーはハハッと豪快に笑いながら、俺に親指を立てていた。
俺もサラと同じくその場で全員に見られながら、顔を少し赤くする。
サラは、チームの熱い視線と、俺の告白に等しい誘いに、「バカね、こんなところで言わなくても…」と小さな声で叫びながらも、口元は緩みっぱなしだった。




