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世界最終戦争~CPO6~  作者: 胡蝶 蘭
第二章【地獄への切符】
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不完全な男①-理星サイド-

 

 不完全な男①【‐理星Side‐】



 この【内閣特命情報管理庁】が発足して、もう二年になる。


 東大卒でIT技術のエースである俺は、発足当初から事件の解析を担当していた。


 テレビで報道されている通り、少し前の日本では絶対に考えられないような事件が、この2年の間にあちらこちらで起きている。


 地上波でも新聞でも週刊誌でも「黒いコートの人物」については一切報道されていないし、海外でもこれに関しては情報規制がかかっている。


 一般の人々は、まさかこの一連の連続殺人や海外の事件までもが繋がっているとは思ってもいないだろう。


 ……いや、思ってくれなくていい。


 俺はどうも昔からパソコンとにらめっこするのが得意で、人のエモーションがわかりにくいところがあったため、よく勘違いされる。


 だが、一つだけ俺の心の中に昔から変わらないものがある。



 それは【日本が安全な国でいてほしい】という、極めてシンプルで論理的な願いだ。



 じゃないと、引く手数多だった俺が、わざわざ給料の低い公務員なんて仕事を選ぶわけが無い。


 途中から入って来た三好さんにしても、九条さんにしても、そうだろう。みんな、使命感が有るからこそ、この仕事が続いている。


 何もそのために、今目の前で俺が一目おいている九条さんがいうような、AIによる非人道的な「最適化」みたいなことはしようとは思わないが──。



「このチップの大きさを見てみろ、始。これは盗聴器だが…」


 時々、九条怜という男の事が理解できないことがある。


 この人は、ウォール街で鍛えられただけあって、数字やデータには滅法強く、俺でも見落とすような論理の穴をしっかり見極め、結論を導き出す。


 だが、たまにこういう、まるでSF漫画の主人公のような摩訶不思議な仮説を立てて、それを無理やり論理で正当化しようとする無茶苦茶な衝動性があるのだ。


 彼のデスクの汚さと同じで、一貫性が無い。



 ──だが、何よりも俺が不思議に思うのは、何となくその無茶苦茶な論理に納得してしまうところだ。

 


 それは、まるで野球の凄腕指導者が、論理的な言葉ではなく、感覚的な表現で選手を導くのに近い。


 例えば、「腰をグニャッと曲げて、足をパンッとはって、ポーンという感覚で打てばいい」といった、曖昧だが本質を突く指導だ。


 勿論、言われた方は「もっと何度曲げて、ここをこうして」とわかりやすい言葉を求めるものだ。


 だが、その指導の❝凄み❞を分かりたいから、言われた通り出来ないなりにやってみる。すると、自分の中の何かが変わり、進化したような気になる。


 この人といる俺の感覚も、それに近かった。


 俺の最も得意とする「論理」が、九条さんの「情熱」によって、未知の領域に引き上げられていくような感覚だ。



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