残されたメンバー③-理星side-
そんなサラの不安そうな言葉を聞いて、ライリーは、コーヒーを飲み干しながら、ニヤリと笑った。
「確かに怜なら疲れたからといってベンチで寝ているかもしれないな。だけどアイツももう良い大人だ。心配する必要は無い。だが……いつも冷静なサラの顔が特定の男を想い、心配の色を浮かべるのは、見ものだなァ」
サラはライリーのそんな意地悪な言葉にハッとすると、急いで顔をそらした。俺はそんな二人を見て、面白くない気持ちになる。
──俺達はバカじゃない。
サラが九条さんにどんな気持ちを抱いているか、見ていれば分かる。だけど全員、大人だからそれを一々口にしなかっただけで‥。
でも俺からしてみれば、サラと俺の付き合いの方が長いはずなのに後から来た九条さんを常に優先されるのが何となく腹が立つだけだ。
「な、何を言っているの。私はただ、リーダーが激務だからと尻尾を巻いて逃げないか不安なだけよ!」
「ほう?よく言うよ、な。ライリー?」
キムは、面白がるように言った。そして、先ほどのライリー捜査官の言葉を超える程の意地悪な言葉を続ける。
「理星、お前の解析能力で、サラの心拍数と視線誘導の異常値を割り出してみろ」
「いやいや、このクソ忙しい時にそんな話に巻き込まないでください。」
俺がブスッとしながら、そう答えると次はそれを見て三人が笑う。
「理星とファイサルは何か似ているわね」
「ああ、サラ。それは俺も思っていた」
サラの言葉に同意したライリーは書類を閉じると車いすを押しながら、円卓の方へ近づいてくる。片手には自らの珈琲カップを握っていた。
「だけど、ファイサルはどうしてマリアに会計士を勧めたんだろうな?理星、どう思う?」
「会計は世界共通認識です。勿論、法律部分等は違う事もありますが、基礎はどこも同じです。なので会計が出来れば、どの国のどの企業でも、ある程度はやっていける。ファイサルはそう踏んだのでしょう」
「なるほど……。そうやってサッとファイサルの思いを代弁出来るんだから、やっぱりお前たちは似ている部分があるんだろうな」
しみじみとライリーにそういわれると、確かにそうな様にも思えてきた。
今日、ファイサル捜査官はイランの技術者にチップの情報の半分程を渡し、解析の手がかりを見つける手助けをしてもらっている。イランとUAEは切っても切れない関係だ。
ファイサルは即座に自分に出来る事を計算し、そしてそれを行動に移す。そんな冷静さと余裕を持っている捜査官だった。感情に飲み込まれず、自分の思想にも蓋をして、物事を俯瞰的に視る力に関してはチームの中でも頭一つ抜けているだろう。
俺は暖房の風で揺れる自らのコーヒーに視線を落とす。
きっと九条さんはしばらくしたら会議室へ戻ってくるだろう。
それまでは俺も、久しぶりにゆっくりしようかな、と思えた時間だった。




