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世界最終戦争~CPO6~  作者: 胡蝶 蘭
第十二章【絡み合う政治思惑】
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剥き出しの皮肉



 今までとは違う意味で沈む雰囲気の会議室。そんな会議室の沈黙を破ったのは、サラだった。


「『ドミトリは、国のために死んだ英雄だ』……ウクライナとの戦争で、あんなにも多くの命を奪い、そして失った国が、今になってドミトリの死を人道的な英雄譚にするなんて。なんて皮肉なの」



 サラの真面目な顔と皮肉な言葉には、国家の論理と非効率で受け入れがたい現実の溝を浮き彫りにする力が有った。


 だけど、その隣に座るキムの表情は、一転して希望に満ちている。



「待て、サラ。この話を皮肉で片付けるな」



 キムは、珍しく興奮を抑えきれない様子で言った。



「大統領は、リスクを冒してまで我々に直接電話をかけてきた。そして、ロシアと云う国のステレオイメージ通り、義理堅い内側の顔が我々に味方を示してくれたんだ」


「つまり、世界の超大国のトップが非公式な協力者になったという事だ。」



 ポテトとハンバーガーで少し汚れた指先を紙ナプキンで上品にふき取ったキムは、ゼロカロリーコーラを半分ほど一気に飲み干すと、豪快に『プハァ』とため息を付く。


 まるで何かのコマーシャルの様だった。



「九条、これで俺たちは『第五の柱』と対等に戦えるかもしれない。ウラジーガ・プリチの個人的な義理はドミトリの弔い合戦においては絶対的に必要な武器だ。分かっているな?」



 俺は受話器を静かに置き、メンバー全員の顔を黙って見つめる。



「………。」


 ドミトリの華麗な散り様が「国家の効率的な嘘」と「大統領の個人的な義理」という、二つの巨大な力を引き出した。俺は胸が熱くなるのを抑え、亡き友の残した遺産を胸に、静かに命じた。



「チップの解析を急いでくれ。この戦い、勢いのついている内に、イケる所まで行こう。それこそが俺達に残された唯一の❝勝ち方❞だ」



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