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世界最終戦争~CPO6~  作者: 胡蝶 蘭
第二章【地獄への切符】
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使われたピアッサー



「フランスの資料をもう一度見てくれ、桜子」


 桜子は渡された資料を素早くスキャンし、一箇所に目を留めた。


「……これ。フランス語で『執行者の身体検査は、通常の身体検査および薬物検査のみにて完了』とあります。そしてその下に……なんて書いてあるんだろう、『耳と口は見ていない』?」



「耳?」


 九条はハッとした。


 自分の耳に手を当てる。



「耳、ですか? 欠陥のある人間が、耳にチップを埋め込まれてコントロールされている?」


 沢田部長の目が鋭くなった。


 ふと、幼い頃に見た映画の一場面を思い出す。子供の頃、母親に「あんたは将来地球亡命軍にでもなりたいの?」と笑われたSF映画だ。



「待て。もしチップが埋め込まれている事に気付かないレベルの大きさだとしたら? 」


 沢田部長は、この大胆な飛躍を即座に理解した。



「フランスは『通常検査のみ』で終了してる。ロシアやアメリカだって、人権問題が絡む頭部への強制検査は簡単じゃないはずだ」



「だけど部長!黒いコートの男が実行犯と接触したのは、いずれも人目のない場所。耳にチップを埋め込むなんて、どう考えても、実行犯に激しい抵抗を受ける」



 理星が強く反論する。



「激しい抵抗? そうかあ?」


「俺は金融時代に眼の前に札束積まれて罪の意識なくインサイダーに関わった奴や、殺人に関わった奴を向こうで沢山見てきたぜ。」


「こうやって児童虐待加害者や性犯罪の加害者になる様な欠陥のある人間が、目の前に金や薬、女を積まれて、リスクを考えて抵抗すると思うか?」


「しかも、もしそれが【わずか数秒で、痛みもなく終わる】処置だとしたら?」



 九条はデスクに戻り、汚い書類の山の中から一枚の紙切れを引き抜いた。


 それは、理星が昔に解析した海外テロ組織が使用していた超小型チップの盗聴器の写真だった。



「このチップの大きさを思い出してみろ、始。」


「これは盗聴器だが……もしこれ以上に小さいチップが有るなら?ピアッサーに最初からチップを埋め込んどいて、実行犯に自分でピアスの穴を開けさせればもう終了じゃねえか」


 会議室に沈黙が落ちた。


 誰もが非合理的な推論が、冷徹な理屈によって補強され、完璧なロジックを形成していくのを目の当たりにしていた。



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