表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

異世界転移

 異世界転生とか異世界転移とか、男なら一度は憧れるシチュエーションだ。チートスキルで無双して、俺TUEEEE。

 中二病真っ盛りの頃はそんな妄想に胸を膨らませていたけど、大学生になる頃には夢も覚めた。異世界なんてあるわけない――でも、ちょっとだけ「あったらいいな」と思うくらいの塩梅。


 気付けば社会人。

 日付が変わるような時間まで残業することもあるけれど、懐いてくれる後輩もできたりして、人生はおおむね順調だった。


 そんなある日。会社帰りに横断歩道を渡っていたら、ものすごい勢いのトラックが突っ込んできた。避けられるはずもなく、衝撃が走る。

 ──あ、死んだ。

 最後に「人間って意外と空を飛べるんだな」と他人事みたいに思ったところで、意識は途切れた。




「……い、おーい、生きてますか?」


 次に目を覚ましたとき、視界いっぱいに飛び込んできたのは、美少女の顔だった。


「あ、起きた」


 顔の横でまとめられた金髪。ぱっちりとした桃色の瞳。どう見ても日本人ではないその少女は、しかし流暢な日本語を話す。


 混乱しながらも体を起こした俺に、彼女は「よかったぁ」と安堵の笑みを浮かべた。


「……あの、ここは?」

「あ、やっぱりそういう感じですか? ここはサンヴィトリア王国の辺境にある街道です」


 ──サンヴィトリア? どこだ、それ。

 周囲を見渡すと、遠くを馬車がゆったりと走っていた。


「とりあえず、自己紹介しましょう。私はシャロン。駆け出しの冒険者です。お兄さんは?」

「清水誠司。会社員……だけど、冒険者?」


 よく見ると、少女は腰に剣を下げていた。金髪に桃色の瞳というファンタジー感あふれる見た目と相まって、まるでRPGキャラクターのコスプレみたいだ。

 首を傾げる俺に、シャロンは慎ましい胸をそらし、得意げに言った。


「そうです、これでも低級モンスターなら倒せるんですよ」


 ──モンスター。

 その単語に、もう一度あたりを見渡す。ビルひとつない自然、道行く人々の奇抜な髪色、そしてゴトゴトと走る馬車。


「……これ、異世界転移……?」


 拝啓、田舎の母さん。元気ですか。

 清水誠司、(たぶん)享年二十五歳。トラックに轢かれて異世界に来てしまったようです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ