ただ見守っているだけ
主人公は、名もない天使
稚の運命を見届けるためそばにいる
稚を観察して数年がたった。
そして、長く見てきて分かることがいくつかあった。
人は慣れてくると魔が刺しやすいと言うこと。
最初の頃は、最低限の関わりだけだった世話係たちは、
彼は何も力を持たないと気付いたときから
「稚様、今日の勉強は陽の国の歴史と我が当主様の仕事についてです」
「稚様、部屋の掃除をするのであちらでお待ちください」
「稚様、食事の用意が出ました」
など理由をつけ定期的に部屋に訪れては、彼の視力が無いことを良いことに、
好き勝手に色んなことをする人達が現れるようになった。
君が、どんなにヤジや罵倒を世話係たちに吐きかけても止まらなかった。
そんな日常を君は眺めるだけ。天界のルールに、こう刻まれている。
【人間に関与してはならない】これは、君たち天界の者たちが最も気をつけていることだ。
君は、人間たちと姿形は似ているが影響力が違う。
そして君なら最も簡単に、気に入らないモノたちを亡き者に変えられるだろう。
だが君は、自身の役割を全うしなければ行けない。
稚が元服になるまで見届ける使命がある。
『なぁ。稚、君は天界に行ったら何をやりたい?』
『天界に生まれる前からお呼ばれしてるんだわがまま言っても』
『上様はお許しくれるだろう。』
君は、歪な文字を懸命に書いている小さな彼に話しかける。
返事は返ってこないことを知りながら
あと数ヶ月たったら、稚の養子に出る日がくる。
迷瑶市その地域については、君自身も知らない未知場所だ。
そして、彼が天界に呼ばれる場所でもある。
見届けるモノでしかない君は、彼を歩む道の後ろを歩く。
天界のルールが無ければ、少しはスッキリしたのかな