偽善者で何が悪い
没になったもの
プロローグ『杜の都仙台で、この二つ結びにピンときたなら―――』
俺こと鈴木終は、小さい頃から感情を表現することが得意ではなかった。感情を表に表現することが苦手なだけで何も感じてないわけではない。要するに口下手なだけだ。
実のところ、自分の気持ちを伝えたりしなかったのは面倒だというのが一番の理由なんだが。
それでも小学校は話しかけてくれる人はいたし、中学校でもその延長線上で声をかけてくれる奴はいた。
だが高校に入ると一切話しかけられなくなった。
進学した高校は、俺が住んでいる宮城県でも上位三位には入る進学校だ。同中の奴もそれなりに受かっていたが、仲の良かった奴等に限って他の高校に進学した。
高校で積極的にクラスメイトに話しかけるのが面倒で適当に生きてた俺は、こうして晴れでボッチデビューをした。
別にクラスメイトに奇異な目線を向けられる事も迫害されるようなことはない。鈴木終?そう言えばそんな奴いたなぁ、ぐらいの認識しかされていない。まあ、陽キャに陰キャって大声で煽られたことはあるけど。
他者に一切干渉されない事は、それはそれで良かった。寧ろ俺は一人の時間をそれなりに有意義に使っていた。
さて、話は飛ぶが俺はボランティアをたまにする。特に慈善活動に意味を見出している訳ではなく、小学校からの軽い付き合いがズルズルと繋がって今に至るような感じだ。
面倒だとは感じるが、どうも中学校の恩師の言葉が心に響いたらしく、やめようとまでは思い至らない。まあ、たまにサボったりはするが。
何をどう言われたのかはまたあとで語るとして、高校最初の一年はこんな感じで自由に生きていた。
だがしかし、そんな平穏は長くは続かなかった。というか許してくれなかった。
なぜなら、あの忌々しい神の所為で俺のライフスタイルは見事に崩されたからだ。
にへらにへらと、軽薄な笑みを浮かべる、黒髪二つ結びの神の所為で。
特になし