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魔法

 一週間で言葉に不自由がなくなった。

 レヴィがかたくなに、丁寧な言葉遣いをわたしに教えてくれる。自分はかなりざっくばらんなしゃべり方をするのにね。


 なんらかの意図を感じるけれど、もしかしたら……単純に彼の好みなのかもしれないし、女性はこうしゃべったほうが角が立たないのかもしれない。


 最近は、手で探りながら部屋の中を歩き回ることもできるようになった。

 ちゃんとレヴィには許可をもらっている。彼は仕事に出る前に、わたしが触って危ない物を全部撤去してくれてるっぽいので、安心して行動できる。


 とはいえ、平屋でひと部屋という造りなので、初日の半日で家を一周できた。

 そこでわかったのは、この家はどうやらロッジ的なものじゃないかなってことだった。

 同じ形のベッドが等間隔に四台並び、わたしとレヴィが使っている二台以外はリネンを外されフレームのみになっている。そして、観葉植物や部屋を飾るような雑貨はなしのシンプル仕様。


 ちいさなキッチンもあるが、使用感はない。レヴィも専ら外で食料を購入してくるので、もしかするとここでは屋台で食事をする文化なのかもしれない。

 レヴィの買ってきてくれるご飯はいつもおいしいので、この世界の食事事情と外食文化には感謝している。


 あと、壁際の一角になにやら作業スペースがあった。


「勉強机? あと……なにかしら、この道具」


 ぼんやりとした視界で、よく見たくて顔を近づけるけれど、見えるはずもなく。ただ、道具に染みついた薬の匂いがわかった。


「薬……もしかして、これで薬を作るのかしら?」


 これがなにか分かれば面白――そうだ、わたしにも魔力が少しは溜まったから、魔法も使えるのよ。

 どうにか視力を回復できないかとも思ったんだけど、回復とかは聖力の分野で、魔力では目はよくならない。

 せめて、視力を補うような魔法があればいいんだけれど……魔力を放出して反響で物の位置を把握する、というのもやってはみたものの、効率が悪いしずっと気を張り続けなくてはならなくてとても疲れてしまうので、一度やって諦めた。


 だから目下のところ、家の探検は視覚以外の五感に頼っている。


 手にした道具を慎重に触れて形を確認して思案する、これがなんなのか分かればいいのに。――分かればいい? もしかして、人が作った物の情報を、魔法で知ることはできるかもしれない。


「『調べる』魔法」

 手に持った道具をしっかりと見つめながら、魔法を発動させる。

 魔力で物のスペックを開示する、強引な魔法だ。

 魔力の揺らぎと共に、手にした物体の情報が頭に入ってきた。結構な量の魔力が、消費されたのを感じる。

 この第三層に居る限り、すぐに魔力は回復するから問題ない。


「やっぱり薬を作る道具だったのね。へぇ、これ自体が魔法の道具で、魔力と一緒に材料を擂って作れるんだ。薬学とかこの世界にもあるのかしら? それとも、民間療法的な調薬かしら? ……もしかしてこれを使えば、わたしにも薬が作れるのかしら?」


 地方の中小企業勤めで事務職だったわたしは、薬を作った事なんて一度もないけど。この世界の知識なら結構あるわけだし。


 魔力で魔法を使うことについては、こうして『調べる』魔法ができたことから、問題無いっていうのがわかるけれど。

 薬の作り方はどうすれば分かるだろう。

 薬草の実物を見れば、なにかヒントが出てきたりしないかしら。


「魔力が多いところに薬草は多く生えるわけだけだから。この第三層なら、たくさん生えているはずよね?」


 きっとこの部屋に薬を作る道具があるってことは、この層の薬草を作って薬を作る人がいたってことだもの。

 もしも、わたしが薬を作ることができれば、きっとレヴィの助けにもなれるはず。

 脱・おんぶに抱っこ生活よ!

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前回連載していた『中ボス令嬢は、退場後の人生を謳歌する(予定)。』が、一迅社文庫アイリス様より書籍化されました! よろしくお願いいたします! 文庫なので携帯性に優れておりますよー
中ボス令嬢
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