告白
ご飯を食べたらまた眠くなり、レヴィに勧められるまま彼のベッドを占領してしまった。
「まだまだ、体が本調子じゃねぇんだろう。ゆっくり寝て、明日のデートに備えような」
ベッドの端に腰掛けた彼がうとうとするわたしの髪を指で梳いてくれるのが気持ちよくて、そのままスコンと眠ってしまった。
翌朝、身動きが取れない不自由さで目が覚めた。
あまりいいとはいえない目覚めのお陰で、レヴィに背中から抱き込まれているという現実に、悲鳴を上げなくて済んだのはよかった。
太い腕って、枕にするにはよろしくないのね。
新発見しながら、体を反転させて彼の方を向いてその胸に顔を埋める。
胸筋凄いなぁ……。
言い訳をするならば、寝覚めが悪かったから、夢うつつだったの。
じゃなければ、寝ているレヴィの胸に顔を埋めるなんて、しなかった!
あまつさえは、胸に顔を埋めたまま深呼吸なんて真似もしなかったのにっ!
彼の胸で、すーはーしていると、ぎゅっと抱きしめられた。
「アキ、そんな可愛いことしてると、食っちまうぞ?」
彼の低い声がつむじに掛かり、思わず硬直してしまった。
「お、おはようございます、レヴィ」
そろりとレヴィの胸から離れて、朝の挨拶をする。
き、気まずいっ。
「おはよう、アキ。ぐっすり眠れたか?」
なんでもないことのように、彼が挨拶を返してくれたことにホッとする。
「はい、よく眠れました……けど」
「けど?」
彼の胸にパタンと顔を伏せる。
「レヴィの腕は太くて、ちょっと首が痛くなりました」
「そ、そうか、悪ぃ」
そう言いながら、胸にくっつくわたしを抱きしめながら体を仰向けになり、器用にわたしを体の上に引き上げた。
こんな風に人とくっついたことなんてなかったけれど、温かくて、心地よくて、なんだかしあわせになるんだってことをはじめて知った。
きっと――はじめて会ったときからわたしを甘やかしてくれる彼だから。なにをしても許してくれると信じられる彼だから、こうやって心の赴くままにくっつけるんだと思う。
この世界にきて、彼と出会えて本当によかった。
彼の胸の上にのしかかる体勢で体の力を抜き、耳を彼の胸に当てる。
「レヴィの心臓の音が聞こえる……」
「まだ、眠そうだな。もう一眠りするか?」
笑い混じりのレヴィの問いかけに、首を横に振って、心地よい胸の上から体を起こしてベッドに座る。
「今日はデートですから、二度寝はしません」
そう宣言すると、彼も起き上がった。
それから、不意に真剣な表情になると、大きな手でわたしの手を取った。
なんだか緊張を孕んだ空気に、わたしも背筋を伸ばして彼の言葉を待つ。
彼はゆっくりとひとつ呼吸した。
「アキ、君を愛している。これから先の人生を、共に歩んでくれないか」
心臓が止まるかと思った。
そ、そっか、そういえば、この姿の時に、告白されたことなかった。
おっさん姿の時に聞いてはいたけれど……ちょ、ちょっと待ってよ、そうしたら、さっきまでのわたしの態度とか……っ!!
カァッと熱くなる顔を両手で押さえて、いたたまれなさに突っ伏す。
は……恥ずかしぃぃぃ…………っ!
涙目で狼狽えているわたしを、彼はひょいと持ちあげて、彼のあぐらをかいた膝に乗せた。
「アキ? それは、了解ということでいいのか?」
「――はい。わたしも、ずっと一緒に居たいです」
彼に顔を見られるのが恥ずかしく、彼の首に抱きついて返事をする。
「顔を見せてくれ、アキ」
「は、恥ずかしいから、もう少し待ってくださいっ」
渾身の力で彼の首根っこにしがみつくわたしに、彼は引き剥がすのを諦めてくれた。
「アキ、デートには行かねぇのか?」
「……行きます」
彼に手の上で転がされているような気がしないでもないけれど、追加で言われた外で朝食も食べようという魅力的な言葉に抗えず、腕の力を抜いて体を離した。
その途端、彼の手がわたしの顎に掛かり、軽い力で上を向かされ、その唇に彼の唇が触れて離れていった。
「顔が真っ赤だ、可愛すぎて外に出したくねぇな」
「ばっ……っ! だっ、誰のせいだと思ってるんですか」
からかうように言う彼に食ってかかると、彼は色気ムンムンの笑みで「俺のせいかな?」とわたしを骨抜きにする。
こんな調子で、外出なんてできるんだろうか……。