快調
起きたら、すこぶる体の調子がよかった。
視界もぼやけていないし、体が軽い。
防御魔法は解除するまではそのままなので、安心して寝ていられたし。
穴の上を見上げれば、丸く空が見える。
魔獣の食事は終わったんだろう、獣たちの饗宴の音は聞こえない。
すっぽりと穴にはまっていた防御魔法を小さくして、魔法で浮かんで穴を脱出した。
案の定外はなんていうか、スプラッターの痕跡が残っていたんだけど、残骸とかはほとんどなくなっていた。
ただ、ひとつ、両手を合わせてじゃないと持てないくらい、大きな深紅の宝石のような物が落ちている。
魔法で調べてみれば「魔力石」と出た。魔力石といえば、この世界で動力源として使われているもので、電気の代わりとなるものだ。
とすれば、今後使うことがあるかもしれない。
異空間に収納しておく。
他にも、魔獣たち的に食べにくかったのか、固そうだけど綺麗な鱗や牙が落ちていたので収納しておく。
視力も回復したので、これから第二層にいこうと思うんだ。
レヴィに会いたい気持ちはあるけれど、正直言って、ランドマークもないこのだだっ広い密林で、彼に再会できる気がしない。
どうやって探せばいいかもわからない。
それなら、第二層に移動して、冒険者ギルドに尋ねたほうが、よっぽど効率的に探せる。
……いや、探さないほうがいいのかもしれない、とも思う。
きっと彼も、一時面倒をみただけの人間のことは……すぐに忘れると思うから。
ただ、いつか、お礼は伝えたいな。
――なんていう感傷は、まず、生きてこの第三層を突破できたらの話だよ。
周囲から聞こえる、獣のうなり声。
わたしのような弱っちい生き物が、捕食対象にならないわけがない。食い応えはないかもしれないけれど、簡単に捕れる獲物なんだ。
それから丸三ヶ月、わたしは第三層を延々彷徨った挙げ句、とうとう第二層へ向かうダンジョンの入り口を見つけだした。