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シチュエーションボイス

台本 夏祭り

作者: 月夜黒

『今日は待ちに待った夏祭り。 

 それもただの夏祭りじゃなく、友達の協力もあってなんとか好きな人を誘えた、高校最後の夏祭り。

 きっと今回を逃したら、またいつもみたいになにも伝えられずに、後悔ばかり残して終わっちゃう。

 今回こそはきちんと想いを伝えるために浴衣も買って、浴衣と着付けもお母さんに教えて貰った。

 だから何としてもこの気持ちを伝えて、あの人との最高の思い出にしたい。

 そんな想いを胸に、私は強ばらないように気をつけながら大好きなその人に声をかける』




 おまたせ〜浴衣の着付けに時間かかっちゃって……待った?

 そっか、ありがと!


 …………ねえ、今年はその……浴衣とか髪型とか割と気合い入れて来たんだけど、どうかな?

 似合ってる?!そっか、頑張ってよかった!


 それにしても結構有名なお祭りだけあって人も多いね

 うっかり人混みに流されないように気をつけなきゃ……


 あ、なんだったらはぐれないように手でも繋いどく?


 な、なんてね、冗談!冗談だから気にしないで!


 いいからいいから、それじゃ回ろっか!


 それにしても、思ったより屋台たくさん出てて迷っちゃうね〜。なにから手をつけよっか。


 んー?私?

 私はねー、お祭りだとりんご飴が一番好きかな!

 お祭りに来たら必ず買って持って帰って、家に帰ってお祭りとか花火を振り返って楽しかったなー、来年も行きたいなー、なんてことを考えながら食べるの。

 そうするとね、

 例えばもっと回りたかったなー、とか花火あんまり見られなかったなとか、少しだけ寂しい気持ちも湧いてきちゃうんだけどね、温かい気持ちっていうか、優しい思い出に包まれるような感覚になって、次のお祭りが一段と楽しみになるの!

 むしろ私にとってはそれも含めてようやくお祭りって感じかな!


 あとはねー、弟たちが喜ぶから綿菓子なんかも買って帰るかな。

 食べながら口元とかベタベタにしてるけど、喜んでくれるならそれでいいかなって思うから、今年も買いたいな。


 ……でも今買ってもきっと溶けちゃうし荷物になっちゃうから、その2つは最後に買おっか。



 だから最後は私が欲しいものに付き合ってもらうとして、最初は君の好きなものを買いに行こっか。

 どこに行きたい?


 行きたいところがいっぱいあるの?

 うん、むしろ大歓迎だよ!花火大会まで沢山時間もあるし、いっぱい回ろっか!

 じゃあまずは……1番近くにあるのはあの焼きそば屋さんかな〜、ベタだし普段から食べてるけどお祭りの時の焼きそばは特別って感じがして格別だよね!

 でも他にたこ焼きとか玉せんとか、フライドポテトとか、美味しいものも沢山あっていつもおなかいっぱいになっちゃって大抵全部は食べられないんだよね。


 だから、コスト削減にもなるし2人で半分こ、とかどうかな?

 よしきた!ありがと!それじゃいっぱい食べて回ろー!

 あ、あっちに射的とフライドポテトのお店もあるよ!

 今度はあっちにいこ!


『それから私達は時間が経つのも忘れて高校生最後の夏祭りを満喫した。

 射的にチョコバナナ、ヨーヨー釣り、たこ焼きにかき氷、祭りくじ。

 好きなだけ美味しいものを食べて、遊んで、祭りの空気に流されるがままお金を充実感に変えていった。

 それはもう、今までの夏祭りとは比べ物にならないほどの幸福感だった。

 きっとこんなに幸せなのは惜しみなくお金を使ってるからだったり大きな規模の夏祭りなのもあるかもしれないけど、やっぱり大好きな人と一緒に楽しめたから、というのがとてつもなく大きいと思った。

 ふと隣を見れば君がいて、君と笑えて、楽しいことを共有出来る。

 私がふと君の方をちらっと見ても気づかないくせして、時折私が人混みに流されてないか、ちゃんと楽しめているか確認して振り向いてくれる君の優しさがほんとに嬉しくて、思わず赤らんだ顔ではにかんでしまいそうになる。


 今日この日は、私にとって二度と忘れることのないくらい最高の思い出になると思う。

 でも、恋って欲張りだよね。そんな最高の思い出ですら、だからこそ思い出で終わって欲しくないって思っちゃう。

 もしかしたら気まずくなって今まで通り一緒になんて居られなくなっちゃうかもしれないけど、ちゃんとこの人の特別になりたい。ただの友達で終わりたくない。

 だから、絶対今日告白するんだ。


 その思いを胸に拳を軽く握り締め、少し上ずった声で勝負に出る。』



 あ、あのさ!私すごく綺麗に花火見える穴場知ってるんだけど、ほら、ここじゃ人も多いしそっち行かない?



 ここね、昔たまたま迷子になっちゃって見つけたんだけど、ちょうどあの木の間から花火が見えて、人も来ないしすごくいい場所なんだ。

 でしょ?屋台からそんなに距離もないのに、すごい場所だよね!

 でもね、ここの場所教えたの、君が初めてなんだ。


 なんで教えてくれたのかって……えっとね……

 私が……君のことが好きだから、です。

 君のことが好きで、これからも毎年こうして一緒にここで花火を見たいからと思ったから……

 だから、えっと、

 好きです、私と付き合ってください!


 えっ、実は俺もずっと前からって……ほんとに!?

 じゃあ、えっと、これからよろしくお願いします……


『そんな空気を打ち消すように花火の大きな音が鳴り響いた。

 かなり浮かれて手を繋ぎなたいなんて思って思わず君の手をじっと見つめてしまっていた私に気づいてか少し微笑んで手を握ってくれた。

 それが何より嬉しくて、少し強くぎゅっと握り返す。

 それからその手の温度を感じたまま、しばらく2人で花火を見あげていた。

 咲いては散るそれがいつになく綺麗なものに見えて思わず見惚れてしまう。

 でもそんな時間は瞬く間にすぎて、終わりを告げる放送が流れる。』


 ほんとに綺麗だったね!それじゃ、そろそろ帰ろっか!


『それから私達は、たくさんのお話をした。なんてことない話から、お互いいつから好きだったか、とかそんな少し恥ずかしくなってしまうような話まで。そんな時間ですらほんとに愛おしくて気づいた時にはもう家の前だった。』


 あっ、私の家、ここだから!

 うん、送ってくれてありがとね。

 今日、ほんとのほんとに楽しかったよ。だから、絶対来年も行こうね!約束だよ!

 それじゃ、また明日、おやすみなさい。



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