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ショートコメディ『〇〇くん』

ショートコメディ『牛胃くん』

作者: かげる

 ある日。同じ班の人で机をくっつけて給食を食べていたんだけど、


「腹パンチ!!」


 急に牛胃くんが「おえぇぇぇ」と口からこの世のものとは思えない色をした汚物を吐き出した。


「牛胃くん! 牛じゃないんだから、反芻したらだダメだよ!」


 私がそう注意するも、彼の嘔吐は止まる気配がない。まったくもう。教室が汚くなるじゃないか。


「おえぇぇぇぇ」


 私は彼の背中をさすってやった。どうどう。なんか、牛胃くんが吐いてのを見ると笑えてくる。もっと悲惨な目に遭ってほしいなと思ってしまう私は、やっぱり性格が最悪なのかもしれなかった。


「大丈夫? あれかな。牛胃くんの食事中に、私が悪ふざけで鳩尾に一発くらわせたのがいけなかったのかな?」

「おぇぇぇぇぇぇ」

「ごめんね。でも大丈夫。私はそんな牛胃くんのことをだれより気にかけてるんだから! だから安心して! 牛胃くんは一人じゃない!」


 励ましの言葉が効いたのか、彼の嘔吐は治ってきたみたいだ。私のおかげかな。しかし、牛胃くんは、まだげっそりした表情で、虚空を見つめたままだ。全部吐き出したからかな?? 私のおかげかな。


 どうしたのだろう。せっかく私が、腹パンしてあげたのに、なぜそんな顔をするんだ。もう少し、喜んだ顔を見せてくれたっていいだろう。いや、彼はそのままが一番だな。幸福感に浸っている彼の顔なんか見たくない。


「よし。もう一発腹を殴るか」


 そう独りつと、彼は血の気が引くような、真っ青な表情になって面白かった。はあ。なんだか、私がとてつもなくクズな人間な気がしてきた。


 いや、私はクズだが。正真正銘のクズだが。


 あー、くっそー。殴りてえ。誰彼構わず殴りてえ。という気持ちにはなったが、実際には、殴らない(さっき殴ったが)。私は、不要に誰かを殴るようなバカじゃない(さっき殴ったが)。


 それもこれも、牛胃くんが反芻するのがいけないんだ。私は悪くない。


「牛胃くん……」


 知らぬ間に床に倒れていた彼を抱き起こして、とりあえず、さっきまで座っていた椅子に戻してあげた。私っていい人! 彼は白目を剥いていた。口角からは牛乳らしき液体が流れ出ている。


「……」


 無言のままだった(し、死んでる……)。


 やれやれ。こいつも私と同じ、対人コミュニケーション能力に難があるのか。それならそれでいい。私は、いつものように給食を済ませて、昼休みは、陰キャらしく本でも読んで過ごすとしようか。


 とかいって、実際には読書はしなかったけれど。色んな男子に話しかけて、仲良くなったりはしてたが。……というか、私って本当に暗いのだろうか。

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