冒険者ランクが上がりました。
翌朝、俺は王宮の見学を終え、再び冒険者ギルドに来ている。
「こんにちは。今日はどのようなご要件でしょうか?……って君はもしかして昨日Cランクの冒険者を倒したって噂の?」
「え?あっ、はい。そうですけど。」
マジか。もう噂になってるのか……。
そういえば、結構視線を感じるな。
まぁそりゃ昨日派手にやらかしたからな。
「そっか。やっぱりね。それで?今日は、何しに来たの?」
「今日は、昨日受けたゴブリン討伐の依頼の達成の報告に来ました。」
「え?もう終わったの?っていうか、なんで朝に?」
あー、たしかに朝来るのは不自然だったかな。
「すみません。昨日いろいろあって来れなかったんです。」
「そう。じゃあ討伐証明部位をだしてもらえる?」
「はい、わかりました。」
俺はゴブリンの右耳を出した。
「はい、確かに。じゃあ報酬の銅貨10枚です。」
「それから、ゴブリンのとオークの鑑定って出来ますか?」
「うん、出来るよ。でも、ゴブリンだけじゃなくて?どうしてオーク?」
「それは……ここじゃ話せませんね。」
「そう...。じゃ着いてきて。」
俺はギルドの裏の敷地に案内された。
「そういえば、君手ぶらじゃない。どこに鑑定する素材があるの?」
「大丈夫です。アイテムボックスがあるので。」
そう言って俺は、アイテムボックスから
ゴブリンとオークの死体を出した。
「へー。すごいわね。でもこれ結構レアなスキルだからあんまり人に見せたらダメよ?」
「はい。分かってます。」
「それにしても、すごい数ね。まったく。何体いるのよ。」
ゴブリンは10体しかいないが、オークは山のようになっている。
そりゃ集落1個潰したからね。
「ゴブリンはちゃんと10体ですよ。オークは、わかりませんね。でもオークキングとオークジェネラルもいますよ。」
「は?聞き間違いかしら?キングとジェネラルって言った?」
「聞き間違いじゃないですよ。ちゃんとそう言いました。」
「まさか……倒したの?」
「はい。ついでに集落も潰して来ましたよ。」
「そんな……。ありえない。だってオークキングはAランクの冒険者が5人でやっと倒せるくらいの強さなのに……。それに集落を潰すなんてそんなことが1人で出来るわけが……。
ちょっとギルドカードを見せてくれる?そこに討伐したモンスターが記録してあるはずだから。」
(うーん。まぁそりゃ信じてもらえるわけないか。)
「はい。いいですよ。」
俺がギルドカードを見せるとギルドの受付嬢は走ってどこかへ行ってしまった。
しばらくして、受付嬢はギルドマスターをつれて戻って来た。
「おいおい。またお前か。またやらかしやがったな?」
「ははは。そんなことないですよ。」
「そんなことないわけないだろ。どこに5歳でオークの集落を潰す奴がいるんだよ。しっかりやらかしてんじゃねーか。」
「ここにいますけど?」
「アホか!ったく、とりあえずこれは王宮に伝えるぞ。それでお前はたぶんランクが上がるからな。これから大変だぞ?」
「わかりました。覚悟しときますよ。」
「それから、この素材の量はここじゃ鑑定しきれないから王宮でランクが上がったという報告を受けたあとにやってもらえ。」
ギルマスから説教された後、俺はまだ解体されていない素材(魔物の死体)をアイテムボックスに収納し、王宮に戻っていた。
「おい、ラースやっと見つけたぞ。」
後ろから凄い怒気を含んだ父上の声が聞こえた。
「あっ。ち、父上。ど、どうしました?」
「どうしました?じゃないだろ。お前今までどこに行っていたんだ?」
「えっと、ぼ、冒険者ギルドに...。」
「ほーう?その前は?」
どうやら訓練場に行っていたのはバレているらしい・・・
「その前は、王宮の訓練場に行ってました。」
「はぁ。自重しろって言ったよな?」
「えっ?あっ、はい...。」
「宮廷魔導師の序列1位を無傷で叩きのめしたやつのどこが自重してるんだ?」
へぇ、トトさんって序列1位なんだな・・・
なんかごめん・・・
「ラース。」
「はい?」
「次また王宮でやらかしたら謹慎させるぞ?」
「え!?」
嫌だ!謹慎なんて!俺は自由にしたいのに!
「嫌なら、もうちょっと...いや、かなり考えて行動しろ。」
「はい...。」
「それから・・・」
「え?まだあるんですか?」
「陛下に呼ばれてるぞ。冒険者ギルドから通達があったそうだ。まさかまた・・・」
「そっそんなわけないじゃないですか!」
「本当か?本当だな?」
本当なわけない...。ギルドからといったら
アレしかないのだから...。
「じゃっ、じゃあ僕はもういきますね!」
俺は逃げるように陛下の所へ向かった。
【コンコン】
「陛下、ラースです。」
「ああ、入っていいぞ。」
なんか声が暗いような気がするな・・・
どうしたんだろう・・・
「失礼します。陛下、どうかなさいましたか?」
「どうしたと思う?まあ主に君の事だが・・・心当たりがあるよな?」
「ギルドの事ですか?」
「よく分かってるじゃないか。ギルドマスターから君のランクをあげてくれと苦情付きで手紙が届いたぞ。」
「申し訳ありません。」
「まあ、君のような規格外をFランクにおいておけないからひとまずBランクまで上げるが、高等学院生になるまで...つまり15歳になるまで冒険者活動は禁止する。」
「はい...。分かりました...。」
「通常なら依頼をこなさなければランクは下がるがそこは私の権限でどうにかしよう。」
こうして冒険者活動を禁止された俺はその後、初等学院、中等学院、をとても平和に過ごす・・・はずだったのに・・・