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キミは可愛い婚約者

作者: ともしび

今日は待ちに待った日。

今日という日のために肌や髪の手入れ、化粧や服も整えた。

体形も維持している。

あとは、この状態で彼に会うだけ。


じっと鏡の中の自分を見つめる。

「大丈夫かしら…」

思わず弱気な言葉がこぼれる。

「大丈夫ですよ、お嬢様。」

準備を手伝ってくれた侍女が私に微笑みかける。

「そ、そうよね……。あなたが仕上げてくれたのだもの。」

「その通りです。

まったくお嬢様は、あの方に対しては弱気なんですから。

いつもの強気はどこに行ったのですか?」

「だ、だってぇ……」

ついつい、弱々しい声が出てしまう。

「わかっていますよ。」

侍女はにこにこと嬉しそうだ。

彼女の技術を疑っているわけではない。

ただ、私が彼に気に入って貰いたくて勝手に不安になっているだけ。

コンコン…

扉がノックされる。

「エリミナお嬢様、アルベルト様のお出迎えの準備をお願いします。」

「すぐに行きます。」

私は立ち上がり、彼を出迎えるために玄関ホールへと向かった。



「そんなに心配されなくても、大丈夫ですのに」

侍女は部屋から出ていく主人の背中を見ながらそうこぼした。


――――――――――



「ようこそおいでくださいました。」

うまく笑えているだろうか。

彼の様子を伺う。

彼は、アルベルト・シュベール

私の3つ下の16歳。

私の婚約者。

金髪に青い瞳、整った顔立ちをしている。

いつも無表情で口数も少ない。

私は彼の事が好き。

誰よりも愛している。

結婚適齢期を過ぎた私の婚約者にされているのに、婚約破棄もせず、こうして会いに来てくれる。

何より……

か・わ・い・い!!

可愛い可愛い可愛いっ

今日もとっても素敵!!

男の子にこういうのは怒られてしまうから、なんとか我慢しているけれど。

抱きしめてしまいたいっっ!!

だんだんと凛々しい顔立ちになっていくのを見るのも好き。

彼が好きすぎて、ついついだらしない顔になるので引き締めなければならない。

気持ち悪がられて、婚約破棄されたら……

私は死んでしまう。

いえ、今も幸せすぎて死んでしまうかもしれない。

我が家の温室に作ったティールームでお茶をした。

私が近況を語るばかりで相変わらず彼からの言葉は少ない。

それでも相槌を打ってくれて、私に少しだけ微笑んでくれる。

去り際に、次の約束もした。

彼が乗った馬車を見送って、ほっと息を吐く。

侍女に報告しに行こう。

次の準備を始めなくてはっ!!


――――――――――


「はぁ……」

重いため息がこの部屋の主人からこぼれ落ちる。

「どうしましたか、と聞くべきですか?」

大体の予想はついているのであまり聞きたくはないが、この部屋の主人アルベルト様に問いかける。

「今日も可愛かった……」

重々しく言っているがただの惚気だ。

アルベルト様は、婚約者であるエリミナ様を愛している。これでもかというくらい溺愛している。

エリミナ様本人には伝わっていないようですが、アルベルト様とエリミナ様に仕える者達の間では周知の事実。

「今日も一段と可愛くて、黄色のドレスも似合っていた。

周りの花が霞むほど、可愛い。

どうしてあんなに可愛いのだろう。

ああ、他の男が寄ってこないか心配だ。

これ以上可愛くならなくても良いのに、会いに行くたびに可愛くなっていくような気がする。

あんなに可愛い人が何故今まで結婚していなかったのか不思議なくらいだ。」

アルベルト様は悩ましげに再びため息を吐かれる。

「アルベルト様、何故ご本人の前ではその饒舌が無口になってしまわれるのでしょうか?」

「そ、それは……」

アルベルト様は、先程の饒舌はどこへやらもごもごと歯切れ悪く言い淀んだ。

アルベルト様は、エリミナ様を溺愛しすぎて何故か本人の前になると極度に無口・無表情になられる。

エリミナ様にアルベルト様の本心が伝わらないのも無理はない。

「居もしない男の影の心配よりも先にエリミナ様に愛の告白をされる方が先なのでは?」

「あ、ああ……。わかっている」

次にエリミナ様に会うときに告げる言葉をアルベルト様がまた一から考えはじめたところで、退出する。




この人達がお互いの気持ちに気づくのは、いつになることやら。

従者一同はお二人が幸せになることを心から祈っております。


両片思いがテーマです。

お茶会シーンを書こうとしたのですが、アルベルトのキャラクター設定上、全然喋らないので断念しました。

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