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プロローグ

 最近オープンしたばかりのそのファミリーレストランにやってきた宮路治(みやじおさむ)は店内をきょろきょろと見渡しながら席に着いた。すると早速彼の元に一人の女の子がメニューと水を持ってきた。

「いらっしゃいませぇ。」

 その可愛い口調に可愛いウェイトレス服に身を包んだ女の子、水瀬典子(みなせのりこ)を見た治は驚きのあまり椅子から転げ落ちそうになった。

「な、な、何て格好をしているんだ?!」

「どうかなさいましたか、お客様ぁ? ご注文をお承りますがぁ」

 震える声で話しかける治を無視するかのように、典子はその可愛い顔に笑顔を浮かべた。そして運んできたメニューと水をテーブルに置いて彼から注文を取ろうとした。

「そんなのはいいから、一緒に来るんだ」

 治はそんな典子の手を取ると、急いで店外に連れ出した。


 店を出た二人はすぐ近くの公園にやって来た。

「お客様ぁ、困りますぅ。私、仕事中だし、勝手に外に出ると店長に怒られますぅ」

 典子は治に向かってやや困惑気味に言ったが、彼は聞く耳を持たず一方的に話し始めた。

「二人っきりで、その変な接客態度をとるんじゃんない」

 怒り心頭の治の言葉に典子はその接客態度を止めた。そしてその可愛い唇をアヒルのように尖らせ、反省するかのように近くのベンチに座った。

「それより、何であんな所でバイトしてんだよ」

 治は上から目線で典子を問い詰めると、彼女はやれやれといった表情で答えた。

「夏休みに入ってあまりにも暇でのう」

 先ほどまでの可愛い女の子口調が、突然老人のような口調に変わった。そんな典子の態度を見て治は唇を噛みしめるように言った。

「この糞ジジイが…」


 宮路治は何故か目の前にいる水瀬典子の事を「糞ジジイ」と呼んだ。

 典子は治と同じ高校に通う18歳の女子高生。女の子らしい低身長(150cm)にスレンダーな体型(幼児体型と言えなくもない)だが、その大人びた美しい顔立ちから、学生服を着ていなければ大学生に間違えられることもある。

 そんな典子に対して治は彼女の事を「ジジイ」と呼んだ。しかも「ババア」ではなく「ジジイ」だった。

 それは明らかにおかしいのだが、実は何もおかしくは無かった。

 何故ならここに居る典子は本物の典子では無いからだ。正確には、身体は典子そのものだが、その頭の中には治の父親の父親である宮路平助(みやじへいすけ)(の心が入っている。

 ある事件をきっかけにして、青春真っ盛りの女子高生の水瀬典子(18歳)と一年前に経営していた骨董品屋を辞めて悠々自適の生活を送っていた宮路平助(75歳)の心と身体が入れ替わっているのだ。

 それは夏休みに入ったばかりのあの日に起きた…。

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