明日も。
『生』と『死』の価値観の違い。
『幸福』と『不幸』の天秤の不安定さ。
いつも下を向いて、泣いているキミ。
ボクはその度に、馬鹿をやってキミを笑顔にする。
笑顔になったキミを見て、ボクも笑う。
そうするとまた君は涙する。
――どうして?
なんて考えているうちに
キミは決まって同じ言葉を口にする。
「死ぬのが怖い?」
ボクも決まって、こう答える。
『怖いよ?』
するとキミはまた、こんな事を口にする。
「生きていく事よりも辛いの?」
ボクもまた、こう答える。
『生きていくより、辛いし怖いよ?』
すると、キミはいつもこう口にする。
「あたしは死ぬ事も生きる事も、辛いし怖い。」
そして少しの間を開けて、最後はこんな事を口にする。
「でもね? そんな生死よりも、『生きている事』を忘れて
あたしに笑顔を向けてくれるこの瞬間が、何よりも不安なの。
一番大切な時間……この幸せな瞬間こそが、最も怖い時間なのよ?」
そう言ってまた、キミは笑いながら静かに涙を零す。
ボクもそんなキミにつられて、大粒の涙を零す。
――そして筆を置き、静かにこのノートを閉じた。
貴方はいつだって気付いてしまう。
――前髪を揃えただけ。
――崩れたネイルを、ほんの少し整えただけ。
――背伸びしなくてもその唇に届くよう、ヒールを2cm高くしただけ。
――トリートメントを切らしてしまっただけ。
全部全部、気づいてしまう貴方。
全部全部、気付いてくれる貴方。
そんな貴方は、起きてくると決まってこう口にする。
『おはよう。今日もコーヒーありがとうね。』
そう、これだから明日を迎えたくなってしまう。
その笑顔を見て……
――また、不安になる。
END