子供達との始まりと皆の名の発音
この【ふれあいの里】で暮らす子供達との自己紹介会を行うことになった。
「今現在此処で一緒に生活を送ってるのは私、優菜、そしてアルト君以外ですと、あと7人の子供達がいます。恐らくアルト君は優菜と同い年と思いますので、2人が最年長の15歳となります。他の子供達は小学校に通う年齢の子供達です」
なるほどと肯く。
小学校と言うのがよく分からなかったが、とにかく自分よりも小さい子供達と言うのは理解した。
皆、遊戯室にいるとの事で遊戯室に案内された。
優菜と園長先生が先に入り色々話しているのが聞こえる。
「アルトー!良いわよ、入ってきてー!」
優菜に呼ばれて遊戯室に入る。中には7人の少年少女の姿があった。
ざっと見て男3人、女4人のようだ。
そして7人の子供の目線が此方に集中して襲い掛かる。
まずは此方の第一印象を把握しようとしているのだろうか。
とりあえず無害さを前面にしながらまず挨拶をする。
この方針で行こう。
「皆さん。本日から此処で一緒に生活をするアルト君です。さあご挨拶を」
園長先生に促され挨拶をする。
「えっと、今日から此処でお世話になるシン・アルトです。その、仲良くしてくれると嬉しい、かな」
多分笑みを浮かべられたと思う。
個性はないけど変な自己紹介の挨拶にはならなかったと思う。
どうかな?受け入れられたのかな?
そんな風に初めて少々不安に思った時だった。
「おぉ!兄ちゃんだ!大きな兄ちゃんだ!やったー!」
「記憶がないと聞きました。僕なんかでよければ色々聞いてください」
「わぁ、カッコイイ!僕もえっとアルトお兄ちゃんみたいになれるだろうか」
「フフ、頼もしそうな殿方ですわ。よろしくですわ」
「やったぁ~お兄ちゃんが増えるぅ~」
「お兄ちゃんだ。遊んでくれる、かな?」
「うう……優しい?……」
子供達それぞれの反応が返ってきた。
中には此方を窺っている子もいるが概ね良好な感じだ。
「フフ、どうやら皆に受け入れてもらえたみたいね。まあ心配はしてなかったけど良かったわねアルト」
「ああ、そうみたいだね。まずはホッと一息かな」
内心ホッとしたアルトに、笑顔で良かったねと言ってくれる優菜。
この後、御互いの自己紹介をした。色々事情のある子供が多く暮らしているので、中には遠巻きから見つめる子もいれば、積極的に話しかけてくる子もいた。
自己紹介の中で子供達の名前の発音などがやはり気になった。
「ん?どうしたの、アルト?」
「えっ?ああ、いや、なんて言うかやっぱり不思議な名前の響きがするなぁと思ってさ」
「不思議な響き?」
「うん。皆の名前がね。もちろんユウナもだけど」
なんか考え込む優菜にどうかしたと返す。
すると優菜がアルトにもう一度「私の名前を発音してくれる」と言った。なので「ユウナ」と呼んだ。
「ふむふむ。何となく名前を呼ぶ時だけ発音が片言に聞こえる気がしてたけど、アルトは……そうね記憶がないってことだし日本語がきちんとしてないってことかしら?でも会話はこうして日本語で出来てるし名前だけなのかしら?」
優菜「よし」と頷くと何か書くものを探しに行った。直ぐにペンと白い表面のボードを持ってきた。
一体何をするのだろう?
「もしかしたら、アルトって日本語、特に漢字って解る?」
「いや。ニホン語?そのカンジ?と言うのかが不思議な響きの正体なのかい?」
「何だか大げさね、ちょっと待っててね」
そう言うと優菜はペンを持つとホワイトボードに自分の、つまり【瀬々羅優菜】と書いた。
優菜に「どう?」と聞かれ曖昧と返した。
「ああ、見た事もない…と思う。記憶がないから何とも言えないけど。……そうか、ユウナはこういう字なのか……」
「ああ!優菜お姉ちゃんばっかりズルい!アルト兄ちゃん!俺のも覚えてくれよ!」
「ぬけがけだぁ!僕のもぉ!」
「あのぉ…私も……」
「ああ、わかった!ちゃんと覚えるから、皆順番にね」
「「「はーい!」」」
「あはは、凄いねアルトは。もう皆に懐かれてるし」
アハハと苦笑しながら、皆の名前の字と読みをまず教えて貰い、何度も発音した。
そのまま漢字について優菜に教えて貰う事になった。
取り敢えず子供たちの字と簡単な読み書きのできるものから教わった。
子供達も一緒に勉強する事になったが誰も嫌そうにはしてなかった。
寧ろ楽しそうだった。