感じる違和感
此処【ふれあいの里】で生活すると決めた後、此処についての説明を受けた。
まず今いる街の名前は安城木町と言うみたいだ。
この施設の名称は『ふれあいの里』と言い、事故等の理由で親を失ったり、親権放棄等の理由で1人となった子供を受け入れて生活を支援する場所らしい。
ここで暮らす子供は身元があやふやな子もいるらしい。
(僕がそれに当たるわけだ…)
「僕は身元不明ですけどどうなるのでしょう?」
「それに関しては此方にお任せしてください。身元身分保証に関しては此方で対処しますので安心してください。数日はかかると思いますが、身分発行が出来ましたら此処を出ることも問題ないと思いますので」
「なるほど……よく分からないのでお任せします。とりあえず暫くは出歩き禁止で此処で生活していけばいいと言う事ですね」
「そうなりますね。まあ何もしないのは退屈でしょうがここには優菜以外にも何人かの子供たちもいますし。そうですね、よければ記憶がないと言う事なら勉強をしてもらうのもよい時間の使い方となるでしょう。分からないことは優菜に教えてもらうといいでしょう」
「え?私が?アルトに教えるの?」
「あら?不都合でもあるの?たぶんアルト君と優菜は同じくらいの年齢と思いますし、教えてもうには打って付けでしょ?」
「…アルトは、その、どうかしら?私に教えてもらうだけど」
「ユウナが問題なら是非にもお願いしたい」
任せない!とやる気満々の優菜。
お手柔らかに、と苦笑した。
そのあと。
一先ずの説明を受けた後、体を起こしてみることにした。
今まではベッドに上半身だけ起こしてる状態だった。
膝下の布団を退けるとゆっくりとベッド端に座りなおす。
そして膝に手を置きながら立ち上がる。
うん。ふらつきもないし体の方は特に問題はなさそうだった。やはりだが体が重いかな?と若干の違和感を思わなくもなかったけど。勿論太っているわけではない。寧ろしっかりした筋肉がついている良い身体つきをしていると思う。
「うん、問題ない……けど…服かな、問題は」
着ていた服は黒のシャツにズボンと言う出で立ちだった。
その着ている服はどこかしらが破けていたりとボロボロと言う感じだ。
このまま着て過ごすには少し不適切だと思った。
しかしこうして着ている服を見てみると、記憶がないので何があったのか不明なのだけど、何か事件にでもあったのかと思う感じだった。でも身体自体に傷はないし問題はないように思う。
「ふふ、一先ずはこちらで見繕った服です。当面はこちらの服に着替えるといいですわ」
「まあ、アルトは男の子だし服のサイズがある程度あってたら問題なと思うけど、何か違和感あったら言ってね」
園長先生に渡された服。
白地のシャツに紺色のジャージぽいのズボン。
受け取ると感謝を告げた。
「何から何まで、ありがとう」
「うふふ。良いのですよ。これからは一緒に暮らす家族の様なものなのですから。ね、優菜?」
「そうだよ!これからは一緒に暮らす、そのぉ、家族、みたいなものなんだから、遠慮はなしだよ!」
「ありがとう」と返す。
とりあえず受けった服に着替えようと思い、受け取った服をベッドに置くと上のシャツを脱ぎ始めた。
上から着替えようと脱いでいくと、優菜が真っ赤になりながら慌てて部屋を出て行った。
ポカンとなるアルト。どうしたんだ?と思っていると、園長先生も「あらあら、あの子もそんな年になったのねぇ」と笑顔を浮かべながら部屋を出て行く。
「着替えが出来たら出てきてください。部屋の外で待っているから」と外に出られる際に言われた。
何だかよく分からないけどとりあえず「わかりました」と返し着替えを再開した。
受け取った新しい服に着替えていく。
着替えての感想だが、サイズなどは特に問題はなさそうだった。ただどうやら先程まで着ていていた服と、今纏っている服とは材質が多少異なるという事に気付く。
まあ、着られる分には問題はなさそうなので気にしない事にした。
それより気になったのは自分の身体かな。体のあちこちにあまり目立たないけど小さな傷があった。
まあ、うっすらとあるだけなので注意して見な限りは分からないくらいだし気にしない事にした。
気にしたって今の自分には判らないのだからしょうがない。
白い半袖のシャツに、紺色のジャージズボンを穿いて着替えは完了した。
着替えた後姿見の鏡があったので目を向けてみた。変なとこがないか?と思ってだった。
そして鏡に映る自分に違和感が強く感じた。それは自分の髪と瞳の色だった。
自分の黒い髪を一つまみして見る。
「…黒……黒、だったっけ?……何か違うような気が…う~ん?)
違和感が強く出ているが触ってみた感触で染めたものでもないと何となくわかった。
「それに…僕の瞳って髪の色と同じ、だったっけ?…なんか違う感があるんだけどな…」
瞳の色も同様に違和感が強い。寧ろ髪色より強い感じだった。あと自分の右目付近にも強く感じた。ふと右手で右目の辺り、あと額辺りを触ってみた。そして結果は(何かが足りない?)ような気がした。
「う~ん?」と不思議そうに見詰めていたけど、結局「まあいいか」と分からないのだから気にしても仕方ない、そのうち慣れるだろうと考えに至った。
その後、着替えが終わった後、部屋の外に待たせている園長先生と優菜の待つ外に向かう。
ドアを開ける。
「お待たせしました。着替え終わりました」
「いえいえ。ふふ、良く似合ってますよ。ねえ、優菜?」
「ほえ?は、はい、うん、そのぉ、似合ってるよ、アルト」
着替え終わった姿を見て園長先生は笑みを浮かべて似合っていると褒めてくれた。その後何やら含みのある笑みを優菜に園長先生は向けた。
ぼお~とアルトを見つめていた優菜は園長先生の、恐らくからかいを含んだ声に反応し、頬を染めつつアルトに似合ってると告げてきた。
その優菜の様子に何だか気恥しい気分になるアルトだった。