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『英雄冒険記』≪地球≫から2年ぶりに故郷に帰還したら1000年が過ぎていた!?  作者: 山都光
1章-Ⅰ~記憶を無くした【英雄】は地球で過ごす~
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夢誘うは誰を求めか

一章・プロローグ



暗い暗闇の世界。

見渡す限り暗闇で先が見えない。でもただ暗闇だけではない。

視界に広がるその暗闇を照らす数多の小さな光が輝いていた。


(またか…)


この暗闇の世界に黒髪の少年がいた。

彼は思わずと言うかいい加減勘弁してほしいと思いつつ、自分ではどうすることもできないと既に分かっているので、只々この”夢の世界”に身を委ねる。

そうこれは夢。

自分の夢。

シン・アルトの精神が映す夢の世界。

夢であるのに自分と言う意識がはっきりしている。


(はぁ…また寝不足になるじゃないか…)


睡眠行為は身体の休息を目的にしているはずだ。

しかしこの睡眠時の夢は違う。

確かに夢から覚めれば身体は睡眠による回復を得ている。

しかし精神的には癒されない。

なぜならそれは夢であろうと目が覚めている。

そんな状態で熟睡できるわけがない。

ただ溜息を付き愚痴を零す。


不可解な夢。

只々この暗闇に光の粒が輝く世界を浮遊しながら漂う。

只々漂う何が目的なのか不可解な夢。

ただ一つ。

この不可解な夢の世界ではあるが、なぜか心が安らいでいるのを感じていた。。

懐かしい。そして愛おしい気持ちになる。

それが何故か自分でも分からないのだが、どうしても心が求めるのだ。

この夢の世界を。


『”--!”』

(声が聞こえた…)


この夢を見始めて数ヵ月。

始めは先の通りただこの世界を漂いそして気付けば現実に目覚めているだけだった。

しかし最近、数週間前から僅かに変化が生じ始めた。

その変化が今頭に聞こえてきた”声”だ。


『”--“――ル ――ルゴ―!”

“アル―― ふたた―― ひつ―う――!”』

(なんだろうか…ここ最近は聞き取れる声が増してきている…)


最初はただ”よく理解できない声”が微かに一音くらい耳に届く程度だった。

しかし最近、ここ数日はこうして”何故か理解できないはずの声”が理解して聞き取れるようになり言語として増えてきていた。


(僕を呼んでいるのか、この声は…)


完全に聞き取れていないがどうしてかこの声の主は自分を呼んでいるような気がしている。

そして自分はこの声はなぜか知っている気がしてならない。

自分に近しい存在だったように。

もしかしたら2年前以上の消えている自分の記憶に関係のある者ではないのか?とか。


……しかし、この声(恐らく声質から女性だと思う)を聴いていると、ふと、こうなんだろう。

苛立ちに近い、揶揄われているかのような気持ちが奥底から湧いてくる。

けど、


(懐かしいって気持ちが強い。おぉい!この声の主!僕に何の用なんだ!なぜ僕を呼ぶんだ!)


無駄と分かっているけどこの声に向かって叫ぶ。

この夢ではあくまで自分は傍観者のような存在のようだ。

声を出してるつもりでもその実は発声出来ていないみたいだ。


けど分かる。

相手にはこちらの声が伝わっている。

だからたとえ声になっていなくても叫ぶ。

もう一度声にして叫ぼうとした時だった。


自分を呼ぶ声の主と違う、女の子の声が自分を呼んだ。


”――アルトぉ~朝だよぉ~”

(この声は…優菜か…ってことはこの夢も終わりかな…。はあ、また眼不足だよ。学校し――)


ここ2年、記憶を無くして倒れていた自分を見つけ助けてくれた女の子の声が現実から聞こえて来たことで、いつものこの夢が覚める。

寝不足で学校に行くのが憂鬱だと溜息を付こうとした瞬間だった。


『“さあ、アル……ト、迎えに行くよ…“』

(えっ!?)


今までで一番はっきりとした声が聞こえた瞬間、暗闇は白い光で覆われ夢から現実へと意識が昇って行った。



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