Good Dreams
今までいろいろなものを吸収してきた。美しいもの、汚いもの。幸せ、不幸。優越感、劣等感。優しさ、罪悪感。そんな物たちが僕の脳の中で液状化して、貯水槽にたっぷりと蓄えられている。その貯水槽に排水溝は存在しない。だから、時々、液体が貯水槽からあふれ出し、空気と反応して大爆発を引き起こす。火はすぐに消える。黒こげになった地面が残る。僕はそれを見ているのがいつも嫌だった。それでも、爆発は不定期に起こる。黒こげに慣れてきたころに起こる。忘れたころに起こる。そしてまた、不快な気分になる。
いや、おかしい。排水溝が存在しないはずがないのだ。貯水槽のどこかにあるはずだ。きっと、液体が混沌とし過ぎていて、見えなくなっているだけなんだ。排水溝はどこにつながっているのだろう。普通に下水処理場につながっているのかもしれない、いや、僕の尿道につながっているのかも、もしかしたら、排水溝なのに蛇口につながっていたりして。そうだったら面白い。
仮に蛇口につながっているとして、一体そこから何が出てくるのだろう。水道水、緑茶、ポンジュース。そんなまともなものじゃないかも。犬の小便、誰かの吐瀉物、ニトログリセリン。わからない。
でも、結果がどうであれ、本来その液体は排水溝からどこかに流れていくべきなのだ。いちいちこぼれて爆発されるのはもうこりごりだ。いつも同じ結果になるよりずっといい。
・・・結局のところ、僕は排水溝に流れていくもの、蛇口から出てくるものがなにかポジティブなものだと信じるしかない。それが、「良い夢」であると願うしかないのだ。
そして、皆様も良い夢を。