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翌日朝食を終えてからクリフトの元に向かい執務室に入る。クリフトは書類の束と睨めっこしながら執務をこなしていた。
「おはよう!昨日の件でお邪魔したよ」
「おはようございます。農耕の資料はできております!御覧になって下さい」
クリフトは、まとめ上げた資料を俺に渡し、説明を始める。俺は資料を見ながら聞くことにした。その中で興味を示す品目が幾つかあった。
稲穂とジャガイモとテンサイである。稲穂は、沼地の側に原生していると説明を受け、後日現場確認をすることにした。また、ジャガイモについては毒を持っていて食べれない時がある為、誰も食べていないと教えてもらった。俺個人としては稲穂が気になるが、先ずはジャガイモをクリフトに説明する。発芽したものは、芽を切り取ることと緑色に変色した物については、皮を厚く切る、または廃棄することで毒を受けないですむと伝える。ジャガイモを何個が持ってきて貰い、クリフトとアリアを連れて厨房を借り、俺はジャガイモの皮を剥き、大きめにカットして鍋で茹でる。茹で上がったら水気を飛ばして粉吹き芋を作り、塩を絡めて完成させた。
「食べて見てくれ!」
俺は、粉吹き芋をはふはふと口に含み食してみせた。クリフトとアリアは、恐る恐る口に入れていく。
「美味い!ルーフィン様これは美味しいです!!」
「これ程簡単に調理できて美味い物だとは…」
アリアとクリフトは、粉吹き芋の美味さに感動していた。
「これは、簡単な調理の一例でしかない。まだまだ調理方法は色々ある。それよりも、このジャガイモは、2〜3ヶ月で収穫出来ることが最大の利点だ」
クリフトは、目を見開きて俺に歩み寄る。
「2〜3ヶ月?我が都市の食料危機を救える作物となるのでは!」
「俺も、そうなると思ってるよ。その為には、農地を増やすことと、 輪栽式農業を行いたいと思ってる。」
「輪栽式農業?」
クリフトは初めて聞く言葉に眉を顰める。
「簡単に言うと農地にローテーションを組んで、毎年違う品種を育てることだよ。 小麦→クローバー→ジャガイモ→テンサイを4つの区画に分けて栽培する。クローバーは、羊や馬などの餌として活用する。詳しい内容は、後で書面に書いて説明するよ」
(輪栽式農業ってのは、ノーフォーク農法のことだ。これを導入すれば、家畜の育成も良くなり間違いなく食料事情は改善されるはずだ。)
「わかりました!流石ルーフィン様。知識の底が知れませんな」
「今、ウチの特産は、オリーブと葡萄と聞いているがテンサイを使った物も特産にしたいと思ってる」
「テンサイですか?」
(テンサイとはサトウダイコンのことである。都市レアルの特産物がイタリアやギリシャと重なる様にオリーブ、葡萄ときていたから、サトウダイコンも有るのではと思っていたら見つけることができた。これは間違いなく、特産物になる)
「ああ、テンサイは、間違いなく都市レアルを豊かにすると思うぞ」
クリフトは、またも困惑しているが気にはしない。
「後でテンサイについても資料を作るから」
資料大好きクリフトは、満遍の笑みを浮かべ頷いでいた。
◆◇◆◇◆
クリフトに連れられて、練兵場まで向かい。土魔法のエキスパート達を待つことにした。
「ルーフィン様、土魔法の優れた者たちを集めて何をなさるおつもりですか?」
クリフトの質問に俺は、にこやかに応える。
「農業をするのさ!」
クリフトの質問に応えている間に土魔法の専門家達が現れる。クリフトは、集団の先頭にいる女性に歩み寄り紹介が始まった。
「此方の方は、魔法の研究室長をされておりますセシル殿、後ろの方々は研究員の皆様です」
「ルーフィンです。皆さん宜しく」
「せ、セシルと申します。不束者ですが、よ、宜しくおねがいしましゅ」
なんか変な自己紹介を受けたがスルーすることにした…。アリアが凄い勢いでセシルを睨んでいるのもスルーしとこう。変な空気になった所をクリフトがフォローを入れ会話が開始された。
「セシル殿は、人と話するのが苦手でして、しかし土魔法については常日頃研究なされており、都市レアルでは第一人者です!」
(要約すれば引きこもり?。深く考えない様にしよう)
「セシル殿、俺に土魔法を教えて頂きたい」
俺の言葉にオロオロしながらセシルが近づいてくる。俺は、セシルを鑑定し能力の確認をしてみた。
セシル
種族 エルフ 女性32歳
レベル 21
HP 53/53
MP 138/138
筋力 17
耐久 16
俊敏 19
魔力 46
器用 28
スキル
【サジタリウス】
弓を用いた狙撃。正確無比の遠距離射撃を行うことができる
【大地の理】
豊穣の女神レアルにより、土・水魔法の威力を底上げする。
魔法
土 レベル36
風 レベル12
水 レベル21
短剣術 レベル1
長弓術 レベル5
騎乗術 レベル4
流石第一人者と言うだけあって魔法の能力が高い。【大地の理】のスキルも魅力的なスキルだ。
「始めに土魔法を色々見せて貰いたい!」
「わ、わかりましゅたっ!」
カミカミになりながら、セシルは、土魔法を唱える。何かの種を土壌に置いたと思った瞬間、練兵場の土壌からツタの様な物が生え急激に成長していった。
「これは?」
「ぼ、防御と…攻撃補助を行う為に品種改良した…トレントの種を使った魔法でしゅ」
「この魔法は、普通の作物や木々にも使えるのか?」
「き、木々には、問題無いかと思いますが、通常の農作物については、力に負けて枯れる可能性がありましゅ」
「素晴らしい魔法だ!早速試して見させてもらう」
俺は、トレントのツタに意識を集中し、土魔法を発動させた。ツタは、俺の魔力により更に成長していく。意識を更に高めるとツタを動かすことも可能なことに気がついた。
「は、初めて、ま、魔法を使われたのですよね?」
「セシル殿、ルーフィン様は、才能の塊です!直ぐにマスターしてしまいますから!」
セシルの言葉にアリアが応える。
「セシル殿!他の土魔法も頼む!」
セシルは、大地に手を当て魔力を注ぐ、土壌が抉れ5m四方程の大きな穴が出来上がる。
「これは、落とし穴か?」
「は、はい。これも素晴らしいな」
早速、 模倣し俺は実践して見せた。瞬く間に土壌が抉れ約10m四方程の穴が出来上がる。
「意識して調整しないと際限なく穴を作ってしまうな…」
その後、俺はセシルの魔力が枯れるまで教えを乞い様々な魔法を会得することができた。昨日も思ったが、俺の自然回復力は尋常ではないらしい。少し休憩すれば、直ぐに使用した魔力など回復してしまうのだ。セシル達に明日から同行して貰い、力を貸してもらう約束を交わした。
ルーフィン
種族 エルフ 男性 14歳
レベル 21
HP 82/82
MP 110/110
筋力 32
耐久 27
俊敏 39
魔力 33
器用 44
スキル
【神眼】
対象のスキルを見ることで模倣 (コピー)し自身のスキルとすることが出来る。但し身体的能力や魔力が伴って無い場合は、完全には再現出来ない
【鑑定】
対象を見ることにより、分析することが出来る
【大地の加護】
豊穣の女神レアルの加護により、大地に関わる全ての物から力を得ることが出来る
【豊穣の女神の知識】
豊穣の女神レアルの知識を元に、アースガルドの知識を得ることが出来る
【サジタリウス】10/10
弓を用いた狙撃。正確無比の遠距離射撃を行うことができる
【風の加護】10/10
風の精霊シルフィの加護により、風魔法の威力を底上げする。
【大地の理】8/10
豊穣の女神レアルにより、土・水魔法の威力を底上げする。
魔法
土 レベル19
風 レベル13
水 レベル14
長弓術 レベル8
騎乗術 レベル5
短剣術 レベル8