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永久の想い  作者: 兎羽
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本当の敵


「じゃーな、トモヤ一樹」


「バイバーイ!」


「本当に送らなくても平気か?」


あっさりと別れをつげて既に帰路についている一樹と比べて、トモヤは心配そうにコウに声をかけていた。


「大丈夫だよ。俺だって男だし、空の部屋に忘れ物してるから取りに行かなきゃだし」


「そっか…。じゃ、気を付けて帰れよ」


コウは笑顔でそれに応えると、トモヤは複雑そうに微笑して一樹のあとをおっていった。

それをしばらくみたあとに、3人も帰路についた。


「…」


「……」


「………」


…き、気まずい……。


三人は横に並んで歩いていた。

コウを挟むようにして歩く二人の間には微妙な空気が漂っていて、居心地の悪さに溜め息をつく。

それに気付いた秀秋は、割り切ったかのように沈黙を破った。


「おい、空。まだ怒ってんのか?小さいのは体だけじゃなくて心もか?」


「ちょっ、ヒデ!何挑発してんだよ!」


素直に謝るかと思いきや、秀秋の口から発せられたのは、先程までのものと何ら変わらないからかいセリフだった。コウは内心ハラハラしながら二人を交互にみくらべていたが、意外にも、ニヤニヤと笑みを浮かべている秀秋とは違って空は落ち着いた様子だ。

いつもなら、秀秋の挑発にも馬鹿みたいにのるというのに……今日の空は何かおかしい。

朝は普通だったのに、いつからこんなふうになってしまっていたんだろう。


突然、少し前を歩いていた空がピタリと足を止め、振り返る。


その視線はじっと秀秋に向けられていた。


「空…?どうしたんだよ」


俺は心配になって、思わず空に駆け寄る。


今の空は、いつもとは違う。

いつもの空なら、こんな目で秀秋を見たりしない。


こんな冷たい、まるでそこら辺の石でも眺めているような無感動な表情を秀秋に向けることはないんだ…。


「怒ったのか?ひねくれたのか?やっぱ餓鬼だな」


「秀秋…?」


今気付いたけど、秀秋も何か違う。

空みたいに、これが変…みたいなハッキリとしたものはないけれど、いつもの秀秋とは違っていた。


秀秋は気付いていないんだろうか…。


空の異変に――。



「別に怒ってないし、ひねくれてもないよ」


ふぅ、と呆れたような溜め息が空から聞こえた。


「だったら何だよ。なにそんなピリピリしてるわけ?」


しばらく二人は互いを見つめあい、無言のままだった。

そしてその沈黙を破ったのは――空。


「俺はただ、ヒデを返してくれればそれでいい。ピリピリ…はしてるのかな?ヒデになりすましているアンタにはちょっとイライラしてるからね」


コウはわけもわからず、空を見つめる。


何を言っているのか分からなかった。

空はまるで今ここにいる秀秋が、本当の秀秋ではないみたいな発言をした。


冷たい口調で、空は秀秋に尋ねる。


「アンタ…誰?」











「……」


秀秋は驚いたように固まったまま。なにも言わないままだ。

空はそんな秀秋を気にした様子もなく、言葉を続ける。


「ずっと秀秋らしく振る舞ってたみたいだけど…俺たちは兄弟だよ?しかも只の兄弟じゃなくて三つ子。気付かないわけないじゃん。まぁ司なら一瞬で分かっちゃうんだろうけど…」


俺は途中で気付いた、と話す空に、コウは絶句。

頭の中は完璧こんがらがっていた。


「…………」


秀秋は肯定も否定もしない。

ただ黙って、空を見つめていた。


「で…アンタ誰?」


コウは秀秋を見つめる。


こいつが秀秋じゃないとしたらこいつは誰かって…?

そんなの、一人しかいない。

秀秋になりすませるやつなんて、アイツ以外いるわけがない。


「しゅ…ぜん…?」


信じられないけど、空がここまで言い切るなら目の前の人物は本当に秀秋ではないのだろう。

そう思ったとき、頭に真っ先に浮かんできたのは昔の懐かしい友の姿。


もう、友とは思ってくれていないだろう…アイツの優しい笑み。


「本当に…秀前、なのか…?」


信じられない気持ちでいっぱいのまま、相手の答えをまつ。


しばらくすると、突然そいつはニッコリとした笑みを見せた。


「ハハ…さすが空。あの頃と全然変わってない…」


「あの頃…?」


秀秋…いや、秀前の言葉に空が反応する。

秀前は以前となんら変わらない優しい笑みを浮かべて、空を見つめていた。


これは…秀前だ。


あの頃の秀前のままだ。


「秀前っ!!!」


気が付けば俺は勢いよく、秀前に飛び付いて抱きついていた。自然と目頭が熱くなり、涙が流れそうになるのを必死に堪える。


今なら謝ることが出来るかも知れない。


許されることはないけど、ちゃんと謝りたい。


「ゴメン…ごめんなさい!!俺、あの時…っ」


堪えていた涙が溢れて、秀前の胸元を濡らす。

殴られること、罵られることを覚悟して秀前にしがみつく。



ちゃんと謝りたいって思っていた――。



だって…小さいころ、悪いことをしたら謝るのが礼儀だ、と教えてくれたのは秀前なのだから…。


俺は悪いことをした。


だから謝る。


ごめんなさいと頭を下げる。


でも許してほしいなんて言わない。思わない。


それくらい、俺はすごく『悪いこと』をしたのだから…。


「顔をあげて?コウ…」


頬に、秀前の手が優しく触れる。俺は抵抗することもなく、その泣き顔を秀前にさらした。


秀前は笑っていた。


まるであの頃みたいに、じゃれあう俺たちを見守っていた時のような優しい笑みで…。


「秀前…」


「いいんだよ、コウ。君は悪くない。そもそもあれは戦争だったんだ。殺らなきゃ殺られる。そんな時代だったんだよ…」


ギュッ、と抱き締められて、俺は微かに聞こえる鼓動で安心しきっていた。

でも秀前の言葉に耳を傾けながら、俺はまた涙を流してしまっていた。


「どうして…」


あの惨劇が、時代のせいだとわかったお前が…なんでまだこんなところにいるんだ。

どうしてまだそんなに悲しそうな笑みを浮かべているんだよ…。

なんでまだ時代に縛られているんだ。


秀前はニッコリと微笑む。


「コウは悪くないよ。すべてを仕組んだのは司魁なんだから」


「……ぇ…」


「全部思い出した。あの戦争を仕掛けてきたのは…司魁だ」

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