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永久の想い  作者: 兎羽
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悲痛


「おりゃあぁぁぁ〜!」


そんな声が響く野原。

空は青くすんでいて、渡り鳥がかけまわる。見渡す限りに広がる緑の草は風に揺れて、ざわわ…と音をたてていた。

そんな原っぱの中心に木刀をもった3人の少年たちがいた。一人は黒髪で木刀を片手に、向かってくる少年の木刀を適当にあしらっている。そして、そんな少年に向かっていっているのが、コウという名の少年だった。


コウは木刀を構えない空也に向かって突進する。が、ひらりと避けられてしまい先ほどからしょうぶになっていなかった。


「おい空也!ちゃんと勝負しろよ!」


そんな空也の態度が気にくわずコウは怒りを爆発させる。

空也は露骨に嫌そうな表情を浮かべて、木刀を右から左へ持ち直す。


「だって勝負、見えてんじゃん…」


ため息をついてコウに背を向けると、二人の勝負を見守っていた秀前の方へ歩き出した。


「シュウ、交代」


片手をあげた空也につられて秀前も片手をあげて、パン!と手を合わせた。


「え……、えぇ!!?」


やっとのことで何を言われたか理解した秀前はすでに原っぱに座り込んでしまった空也を見返した。コウはますます空也に怒りを覚える。


「おい空也!逃げるのか!?」


わざと挑発するようにコウは問う。その言葉に負けず嫌いの空也もピクリと反応する。しかし、木刀を握ろうとはせずに横に倒したままだった。


「勘違いすんなよ」


「…勘違い?」


「強さで言ったら、俺、シュウ、お前の順だけど、稽古だったらシュウの方が強いんだ。お前は強いヤツとやりたいんだろ?」


「ま、まぁな」


コウは「逃げたな…」と思ったが、正論なので言い返すことができなかった。

コウだって10歳の若さにして大人相手に互角に戦えるのだ。稽古をつけている先生にでさえ負けない。

しかし、空也と秀前とでは比にさえならない。

武士たちでさえ、10歳の空也たちに一目おいているのだ。


「空也〜何を勝手に決めてんだよ〜」


泣き言を言う秀前。


本当かよ、と疑いがらも稽古をしてみる。

と、コウはあっさりと負けてしまっていた。勝負が始まった途端に秀前の目付きが変わり、すばやい動きに惑わされていつの間にか一本をとられていた。

しかも秀前は完全に一本入るハズなのに寸止め。


なぜ?と聞くと、曖昧に笑い困ったように「ん〜…痛そうだから」と言われ、それもまたコウの敗北感を倍増させていた。


「ほらな」


「もう一回っ!!」


空也に馬鹿にしたように笑われ、コウは再び秀前に再戦を申し込んだ。

悔し涙を浮かべながら、キッと秀前を睨む。

それを見ていた空也は腹を抱えて笑いだした。秀前も困ったように苦笑いを浮かべる。

幼い頃はなんだかんだと3人は仲良しで、兄弟のように毎日遊んで暮らしていた…。




そして月日は流れ、見方同士の喧嘩が亀裂をいれて、コウは空也たちと離れ離れになった。


コウは17歳をむかえ、その年の冬――…。


大きな戦乱が起こった。













「はぁ…」


コウは大きくため息をついた。

かれこれ1時間。敵軍に幼馴染みだった空也と秀前がいるという情報を聞いて、ずっと戦場を走り回っていた。嬉しくて、道塞ぐものがあれば敵でも味方でも切り捨てる。しかし、進めど進めど、懐かしい顔らしきものは見つからず、走り回っていた消費してしまった体力を回復させようと森林の中で一人、丸太に腰かけていた。


(どこだよ…。空也、秀前…)


どんよりと暗い空を見上げると、見事な満月が戦場を照らす。あちこちから声が飛び交う。


「そろそろ行くか…」


よいしょ、と重たい装備をつけた体を持ち上げるように足に力を入れる。と、その時、ガサッと茂みが動くような音にコウは振り向き構えた。

そこには味方か敵か判断できないほどの重傷を負った青年がいた。頭に被っているカブトでかろうじて味方だと判断できる。


「た…助けてくれ…」


かすれたような声でそれだけを言うと、その青年はその場に倒れる。コウはその青年の首元に手を当てて死んだことを確認した。男の手に目を落とすと、その手にはヤリが握られている。

死後硬直してしまったその手からそれを取るのには苦労したがなんとか手首を切り落とすことなく、取ることができた。


試しにそれを構えて、そこら辺に立っている木を突いてみる。

風を切るような音と、ドスッという音が聞こえた。


「おぉ!」


これは使える、とコウは腰に差していた刀を投げ捨てヤリを片手に装備を直した。

鉄で出来ている刀なんかよりもずっと軽く動きやすい。リーチも長いから、小柄なコウにとって、それはとても扱いやすいモノだった。

コウはヤリを片手に森を飛び出すと、一番騒がしそうな場所へと走り出した。




戦場へ出てみれば、既にそこは血の海と化していた。

死体の多くは味方の兵たちで、敵兵はそれに比べてずっと少ない。辺りを見渡し、敵軍を見付ける。

復讐などとはかんがえていないが、鼻をつく血生臭さがコウの闘気をあげてしまっていたのだ。


――弱イヤツハ死ヌ。


――強イヤツハ生キ残ル。


コウは戦場の雰囲気に酔って、我を忘れていた。


なんの迷いもなく、敵軍へと突進。


その時だった…。


コウは自分の目を疑った。

一瞬、幻ではないかと目を擦った。


敵軍の先頭に立つものは、コウのよくしっている人物で…。

それは幼いあの頃から、さして変わらぬ子供のような顔。


「空也ぁぁあっ!!!」


久しぶりの対面は殺しあいの場所。


ずっとずっと、この時を待ち構えていた。


幼い頃から一度たりとも勝ちを譲りはしなかった空也。

今度こそ、と思いながらその名を叫び突進する。


『勝って、ぜったいに俺をみとめさせてやるんだからな!』


その想いはあの頃と変わらない。


あと3mもない間合いを詰めた時、空也は小さな背中をコウに向ける。


「まだ俺を愚弄する気かっ!!」


怒りに燃えるコウ。


構えたリーチの長いヤリをそのまま、空也の背に突き刺す。


(さぁ、悲鳴をあげるか?)


あげればいい。


俺を認めろ。


しかし、空也は痛みに顔を歪ませることはあっても、悲鳴をあげるなどということはしなかった。最初から空也の視界にはコウなど入っていなかった。


「秀前っ!!」


悲痛に歪めさせたその表情はひどく場違いで、空也はその言葉を最後にゆっくりと倒れる。



――なんて馬鹿なことをしたんだろう…。



そう思ったときは既に時遅し。

コウは愕然と、その光景を見つめ、自分自身を罵った。


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