表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

螺旋

作者: 綾小路千春

『棲み分け』を行うクマゼミとミンミンゼミ。

二種の蝉が譲りあえる理由とは……。

 私は蝉に訊きました。

「クマゼミ、クマゼミ。お前はなぜ譲りあえる?」

 すると、クマゼミは答えました。

「僕は忙しいんだ。そんなことはミンミンゼミに訊きなよ」

 私は蝉に訊きました。

「ミンミンゼミ、ミンミンゼミ。お前はなぜ譲りあえる?」

 すると、ミンミンゼミは答えました。

「俺は忙しいんだ。悪いが来年地に出てくるクマゼミに訊いてくれ」

 一年後、再び私は蝉に訊きました。

「クマゼミ、クマゼミ。お前はなぜ譲りあえる?」

 すると、クマゼミは答えました。

「それが虫にモノを訊ねる態度か?」

 クマゼミは怒って喋らなくなってしまったので、私は反省してミンミンゼミに頭を下げて訊きました。

「すみません、すみません、ミンミンゼミさん。あなたはなぜ譲りあえるのですか?」

 すると、ミンミンゼミは答えました。

「君は謝ってばかりだね」

 私は丁寧に訊ねたのですが、今回もミンミンゼミは、クマゼミと譲りあえる理由を教えてくれませんでした。

 それから更に一年後、再び私は蝉に訊きました。しかし……。

「クマゼミさん、クマゼミさん。あなたはなぜ譲りあえるのですか?

「僕は忙しいんだ。そんなことはミンミンゼミに訊きなよ」

 クマゼミは今年も教えてくれませんでした。

 譲りあえる理由を知りたくて、蝉に訊ねるようになってから、二年の月日が流れました。

 蝉はいつになったら私に答えを教えてくれるのでしょうか。もう待ち続けるのは疲れました。

「これで良し、と……」

 私はとうとう我慢できなくなって、今年の九月に、ミンミンゼミを捕まえました。そして、その蝉を逃げないように、胴体を羽ごと紐で縛り、ようやく譲りあえる理由を知ることができました。

「ミンミンゼミさん、ミンミンゼミさん。あなたはなぜ譲りあえるのですか?」

 ミンミンゼミは答えました。

「子よ、子よ、人間の子よ。今自分が何をしているのか解るか?解るのであれば 自ずと答えを導き出すことができるであろう……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ