俺は妖刀
俺は妖刀・・・そう呼ばれている。
この刀に宿って早300年。
俺が生まれた時はただの刀だった。
霊魔と人間の争いが100年以上続き、いくつもの仲間達が錆びれ、折られていった。
俺が妖刀となったのは、偶然だった。
霊魔退治に向けて用意された刀は100、剣士は70を超えていた。
筆頭は500もの霊魔を退治した経歴をもつ伝説の刀だった。
霊魔王と剣士達の戦いは長時間におよび、
一人、また一人と剣士が倒れ、刀は折られていった。
最後に霊魔王と二人の剣士、俺を含め2本の刀が残った。
もう片方の刀は伝説の刀だった。
竜という有名剣士はそれを振り回し、霊魔王に立ち向かい、
もう一人の誠という剣士は私を握り締めたままカタガタと震えていた。
名のある竜という剣士と霊魔王は相打ちになり、双方が地に伏した。
もう一人の誠という剣士は怯えてその場を立ち去り、俺を置き去りにした。
部屋の中は倒れた剣士達、霊魔達、霊魔王の血が流れ、
ただ一つ折れていない俺に流れ込んできた。
しばらくの間、血の海に沈められていた俺を、
戦場荒らしが連れ去った。
霊魔を退治した刀として・・・。
それから俺は血の海に沈んだ、吸血刀として恐れられることになった。
そのまま競売に出され、高い値が付けられた。
もう一度言おう、俺はただの刀だったはずだ。
俺をセリ落とした商人は、俺に毎晩血を注いでいた。
鳥、ブタ、牛。
家畜の血に浸しては、それを「手入れ」としていた。
柄は赤黒く染まり、臭いが染み付いた。
商人は「手入れ」を怠る事は無かった。
しかし、一日だけ「手入れ」を怠った日があった。
その夜中に商人は血相を変えて、俺の元へ飛んできた。
鼻から血を流しながら・・・。
周りの人間にはこう表現していた。
「あの刀は血を欲しがる。 毎晩血を注がなければ自分の血を奪われる」
そして、
「手入れを怠った夜に鼻血が止まらなかった」
もう一度言おう、俺はただの刀だったはずだ。
俺は思った。
血は欲しくない。
ただ・・・研いでくれればいい。
臭いを取り除いて欲しい。
鼻血は別の理由だと思う。
そして本来の目的である、「斬る」ということをやりたい・・・。
商人はある理由により破綻し、俺を手放す日がやってきた。
その際には血の桶に沈められ、出された。そして高い値が付けられた。
収集家と呼ばれる人間が俺をセリ落とした。
俺を購入する際の注意事項がこう書いてあった。
「毎晩血を注ぐこと、さもなければ所有者の血を奪います」
俺は思った。
・・・奪った事はない。
奪い方も知らない。
収集家の「手入れ」は熱心だった。
俺は常に血の桶に沈められていた。
その桶の血もほぼ毎晩のように取り替えられていた。
乾燥した夜は血の蒸発が早かった。
桶の血が減ることで収集家は喜んでいるようだった。
収集家は変わった人間だった。
とある夜に俺に呟いた。
「そろそろ生き血を吸わせなければ・・・・」
その声は怯えているようにも、喜んでいるようにも聞こえた。
収集家は俺を持ち出し、夜の町を歩いた。
そして人間を斬りつけた。
もう一度言おう、俺はただの刀だ。
収集家は捕らえられ、死罪となった。
俺は初めて斬りつけた代償に刃毀れが生じた。
斬りつけとは、こうも痛みが伴うものであったかと痛感した。
人は口をそろえて、言った。
「妖刀が人を狂わせた。 霊魔が乗り移った」と・・・。
稀代の刀鍛冶に俺は預けられ、研がれ、鍛えなおされた。
赤黒く染まった柄は外された。
柄を外した「なかご」には「誠」と彫られていた。
そしてそのまま、城の地下に幽閉された。
血の桶に沈められたまま。
もう一度言おう、俺はただの刀だ。
しかし城内で怪我人が出たり、血が流れると、
その桶の血は変えられる。
罪人の血に・・・。
何が言いたいのか判らないモノになってしまいました。
ダメ出し含め、感想いただければ幸いです。