3/18 魔鏡
記念撮影及び写真撮影がうまく行った試しがない。
なんか口半開きだし、髪はヘタってるし、つか後ろ髪のボリュームエグい。二段?二段になってる?
微妙に背筋丸まってるし、あまりにも小さくおさまりすぎだし、記念撮影は口を一文字にする縛りでもしてんのか。
間違いなくどちらかが嘘をついている。
何と何かと言われれば、勿論鏡と写真なわけだが。
鏡の中に写る私の姿は時たまananの表紙ですかと見紛うほどのビジュを形成している事があるのに、写真の中に写る私は排水溝に溜まったヘドロを神様が左手でなんとか形成したみたいな面である。
何が悪さをしているのか。
陰謀か。策略か。
おそらくはどちらでも無い。
きっと呪いだ。
この世の遍く鏡に呪いがかけられているのだ。
遥か昔、海の向こうの王国に、美を喰らう魔鏡があったという。
その国の女帝は何百年も変わらぬ美貌で民を統治していた。
鏡は人々の美しさを吸い取り、女帝がその美を自らに注ぎ返すことで、永遠の若さを保っていたのだ。
しかし美を奪われた国民は次第に衰弱し、ついに反乱が起きた。
女帝は魔女として処刑され、忌まわしい鏡は粉々に砕かれて海へと投げ込まれた。
しかし、海に沈んだ鏡の破片は長い年月をかけて砂となり、今の鏡に混じっているのだ。
長く海の底で屈辱に耐え続けた魔鏡は、より凶悪に、より狡猾に邪悪なものへと変容した。
美を吸う力はそのままに、それに映る姿は現実よりももっと美しく。
それを注ぎ返すことはない。
人々は鏡に映る自分の美しさから目が離せない。
その姿が次第に枯れていくのにも気付かぬままに、呪われた鏡に美しさを奪われていく。
そうして、すべてが終わった後に写真の中の自身の姿が排水溝に溜まったヘドロを神様が左手でなんとか形成したみたいな面になっているのを見て初めてその呪いの存在に気づくのだ。




