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3/2 退行進化



弱くなったというべきだろうか。


はたまたある種の成長であったのだろうか。


何にせよ、確かに変化はあったように思える。


洞窟魚が目を失ったように、落葉樹が葉を落とすように、それは見かけ上の喪失のみに落ち着くものではなかった。


半年ほど前、私は毎日のようにコカコーラを愛飲していた。


箱で堅あげポテトブラックペッパー味を購入し、一日一袋、コーラは3杯まで、(場合によってはもう一杯)という厳正にして厳密な取り決めを行い、毎日の間食を彩っていた。


そのような日々を送っていた私が今箱で綾鷹濃い緑茶を購入し、マイクポップコーン濃厚バターしょうゆ味を3日に一回食べるまでになったのにはいくつかの理由があるが、何よりも大きなウェイトを占めるのは、糖尿病の存在であろう。


あの時期は国宝が信じられないくらい流行っていた。


内容は伏せるが、とにかく私はあの映画にて足と目を大事にしようと心底思ったわけである。


以来、私は大好きだったコーラを引退し、間食も数日に一回に収めるようにした。


初めの方は甘味のない生活に苦しむ日々を送っていたが、数ヶ月も続ければ次第にそれにも慣れ、元々お茶が好きなことも相まってコーラからは完全に脱却した。


数日前のことである。


深夜、妙に腹が減りカップ麺をコンビニに買いに行った時である。


どうせ深夜だ。もはや健康など度外視、やってしまおうと思った。


ドリンクコーナーに並べられる各種ドリンク。


レッドブル、モンスター、三ツ矢サイダーと視線が揺らぎ、そして最後にそれに目が止まった。


コーラ。


そこから先のことはあまり覚えていない。


気づいた時、私はテーブルの前で置いたコップにコーラを注いでいた。


炭酸が弾ける音が重なり、小さな歓声が響くようだった。


カップ麺からは湯気が立ち、香ばしいスープの香りを放っている。


食べごろだ。


カップ麺を一口啜り、飲み込む。


空腹にそれは暴力的な幸福感だった。


口の中の醤油の味消える間もなくコップに口をつける。


炭酸と甘味が全身に広がっていくかのようだった。



…。



しばらくしてカップ麺を食べ尽くし、処理も終えた頃、コーラのペットボトルの中にはまだ半分中身が残っていることに気づいた。


カップ麺8、コーラ2ぐらいの割合で食べていたのだ。


まぁそれなりには残ると思っていた。


とはいえもう一回空けたものだ。


さっさと飲み切ってしまおうとコップに注ぎ、そして暫くして後悔した。


甘ったるい。


炭酸は確かにある。それは含まれる砂糖の重さをある程度緩和するものの、喉の奥に残る砂糖の粘つくような後味は消し去ることが出来ていなかった。


注いだコーラはまだそれなりにある。とはいえペットボトルに戻すことはできない。


なんとかそれらを飲み切った頃には、私の内には深い悲しみと、何より驚きがあった。


明確にコーラを受け付けなくなっている。


コンビニに寄るたび2Lコーラを購入していた私はもうここにはいなかった。


コーラから得られていたはずの幸福はもはや在らず、肉体は甘味を拒絶していた。


悲哀の感情が私の中に広がっていく。


だが同時に確信する。

糖尿病の気配が大きく後退していくのを。


これを成長と捉えるべきか、劣化と捉えるべきか、私にはわからない。

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