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2/27 流れ着いた日


成績のない世界がそこには存在していた。


多くの大陸の外にある小さな島、気候は年中温暖で、人々は小さな家を寄せて村を作っている。


年のうち、雨季と乾季の狭間に取れる黄色い鱗の魚が現れた最初の日に祭を行い、人々は誰しもキャンプファイアを囲んで歌い、踊り、日々の安寧と幸福を願うのだ。


そこでは誰もが皆他人のことを評価という形で見ない。


友は友であり共だった人間は皆一様に大切な存在である。


他者との境界は薄く、多くの人がまた多くの人と隣にあった。


そんな村で生まれ育った1人の少年がいた。

名はサト。

好奇心旺盛で、よく父親の乗る船に乗り込み、一緒に漁をしている。


ある日のことだった。


サトはいつものように海辺を歩いていた。


海の香りは好きだ。

薄青の風は広く深い世界を運んできてくれる。

貝殻、木、そして異国のもの。


それはサトにとって何より興味をそそるものだった。


その日見つけたそれもまた、同様に異国から現れたと思われるものだった。


それは一枚の紙。


長く波に晒されて風化しているが、それでもなおその内容は深く刻まれ所々判読が出来るようだった。


「?……B、C、C、B…?」


見たことのない角ばった文字と、アルファベットの配列。


不思議に思ったサトは、村一番の物知りである長老にそれを見せに行った。


大事そうに渡されたそれを一読した長老の顔は、みるみるうちにその顔色を曇らせた。


聞き慣れない言語を話し、目は目まぐるしく動き、口元には泡が浮かんでいる。


普段から穏やかな長老。


しかし既に目はサトを見ていなかった。


サトはあまりに怖くなって長の家から飛び出した。


必死に駆けるサトを見て、村の大人たちが振り返る。


そんな反応も気にせず、サトは村を抜け、気づけばいつもの浜辺に立っていた。


息が切れる。


腹の奥底に捻じれるような不快感がある。


鼓動と共に圧迫される頭は、長老が呟いていた言葉を反芻していた。


「タンイオチテタ・デモヒッシュウジャナイ・タエ・タエ」


意味はわからない。


わからない…が。


好きだった海が、今や得体の知れない何かを内包する深淵に見えた。

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