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1/5 実用化の波


どこかで聞いた話によると、現代に普及している技術は10年以上前に発明されたものらしい。


ベイマックスが上映されたのは2014年。あれの舞台は日本とサンフランシスコの入り混じったサンフランソウキョウという都市であることからも、裏付けが取れる。


つまり、出来ていたのだろう。


知らぬ間に実用化がなされていたのだ。


時空間ワープ装置。


私がドラえもんのひみつ道具のうち何が一番欲しいのかと問われれば、まず一番に挙げるのがフエール銀行である。


フエール銀行。


話を繋げるのに全く関係のない秘密道具が飛び出してきたが、自分に嘘はつけない。


だけど、便利なのだ。フエール銀行。


目を見張るべきは預金した際の利率の高さである。

聞いて驚く勿れ、1時間に1割。私がこの正月でかき集めたお年玉を1週間預け入れようものなら4500億円に増えるというビットコインもびっくりの成長率である。


1週間で4500億円、1ヶ月で710^33円、1年で510^366円である。


もうここまで増えてくると、逆に22世紀のインフレ具合に不安を覚えるが、今は21世紀である。


私はこの文字通り溢れんばかりの金を使って瞼の裏にスマホ画面を投影する技術開発を進める予定である。


大量の札束の中で、瞼の裏に投影されたインターネットの海を揺蕩う未来。


欲しい。


あまりにも欲しすぎるフエール銀行。


ちなみに、2番目に欲しいのはいいとこ選択しボードでその次が悪魔のパスポートである。


一向に冒頭の話に繋げられる道具が出てこないので、話を戻そう。


どこでもドアは、私が大体20本の指に入るくらいには欲しいひみつ道具である。


順位が思ったより低くなったのは、どこでもドアを今の部屋に置くとなると絶対嵩張ると思うからである。


あれは、多分四次元ポケットありきな気がする。


じゃあどこでもまどを使えばいいだろと思うが、あれはあれで目的地に這って出なくてはいけない点で、屋外であった場合どうしても手や膝が汚れるであろう点から順位はもっと下になる。


ともかく、どこでもドアさえあれば煩わしい通勤通学から人々は解放され、銀河鉄道の話にように電車や新幹線は一部の物好きが乗る娯楽施になり下がる。


そうなれば大量の帰省ラッシュに巻き込まれる哀れな私は生まれないと思うのだ。


東京駅の案内板、あれは結構わかりやすいと毎度見る度に思っている。


東京駅やら新宿駅やらはその複雑怪奇な構造からよくダンジョン駅と評されることが多いが、そんなダンジョンの中でも私のような方向音痴が最終的に目標の地点に辿り着けるくらいにはあそこに貼られている案内板は親切である。


だが、今日池袋に向かうため東京駅で丸の内線に乗り換えた時、あまりにわかりやすすぎる案内板にふと疑問を思ったのだ。


毎度丸の内線にたどり着く経路が違う。


ここに告白するが、私は重度の方向音痴である。

幼少期、小学校までの道のりは直線で30分程度だったのにも関わらず小学4年生まで誰かと一緒に行かなければ迷子になり、中学校の校外学習では何十人もの生徒がいる中でいつの間にか私だけ1人になっており、高校まで徒歩15分の駅までの道を知らなかった私である。


そんな私の絶望的な方向音痴と、多分ものすごく頭のいい人が考えた案内板が奇跡的調和を果たしたことにより、凄まじい化学反応が起きている。


道のりが毎度違うのだ。


私は重度の方向音痴だが、一度来た場所のことを忘れるほど痴呆は進んでいない。


そんな私をして、やはり一度も通ったことがないような場所を通らされた結果、最終的に丸の内線の改札に辿り着いている。


地下の長い廊下を歩かされた時もあれば、一度地上に出されたこともある。


しかし、案内板は常にそこにあり、そして私の身を最終的には丸の内線に導くのだ。


度重なる違和感はやがて疑問となり、最終的に一つの解を導き出す。


あるだろ。時空間ワープ装置。


考えてみればおかしな話である。


東京駅構内はあんなにも複雑なくせをして、私がどんなに適当に歩もうと常に案内板が正しい道を示し続けている。


常に。


常にだ。


どの線、どの改札を通ろうと行きたい場所を指し示す案内板が私について回る。


たぬきか狐に化かされていると言われた方がまだ納得感がある。


だが、違う。


これは現代技術が生み出した、最新鋭のワープ装置による効果なのだ。


仕組みはこうだ。


対象の人間の脳波をキャッチし、行きたい線を東京駅のマザーAI、いや、ここでいうならダンジョンコアなのだろうか、がキャッチし、行きたい線までのワープゲートを対象の人間の近くに設置する。


構内の看板が指し示しているのは実際の線への道ではなく、対象の人間が行きたい線までのワープゲートなのだ。


この仕組みであれば対象の人間がどこを歩いていようが、案内板はその場その場で一番近いワープゲートに誘導するだけで済む。


ゴールが複数あるようなものだ。


この理論なら、私が毎度違う経路を辿って丸の内線に向かっているのにも、常に案内板があるように見えているのにも、方向音痴な私が迷わずに済んでいるのにも説明がつく。


ワープゲート。


なんと夢の発明であろうか。


この発明は全ての方向音痴を救っていると言っても過言ではない。


ワープゲートですらも実用化ができたのだ。


次は目下開発中であろうフエール銀行が実用化されるのを待つ次第である。


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