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1/4 冬脱却党

人間は金属でできている訳ではない。


トランスフォーマー2ではディセプティコンの母艦の様な場所で卵から機械生命体の子供が産み落とされるシーンがあったが、当時あれを見た時、てっきり私は彼ら機械生命体は何か巨大な工場か何かで作られているものだと思っていたので、有機的なプロセスから発生する無機質的な存在のチグハグさに大いに困惑したものだ。


まぁ今考えてみるとあれは液体式の3Dプリンタだか何かだったのかなとも思うが、そうなると今度は生命体とはなんぞやという永遠の問いに触れることになりそうなのでこの考えは一旦側に置いておく。


真に問うべきは、そろそろ冬とかいう季節から人間は脱却すべきということである。


11月中旬から冬の寒さが鳴りを潜める5月初旬まで人間は冬の外気温に触れなくていいような法改正を早急に進めるべきなのだ。


冬。


なんなのだろうか、冬。


最近は地球温暖化に際して夏に注目が行きがちだが、やはり真に恐るるべきは冬なのではないだろうか。


ギリシャ神話では、冬とは死の象徴である。


豊穣の神が娘を冥王ハデスに連れ去られる期間だとかなんとかで地上の実りを軒並み死滅させるのが冬である。


さらに北欧神話でも、ラグナロクの前に起こるのは3度続く冬である。


冬。


どこもかしこも滅びは冬から始まるのである。


この様に古から冬とは大いに恐れ、怯えられていた。


震えが、心身ともに身を削る感覚を魂に刻み込んでいた。


しかし現代、それら古からの教えを全く忘れてしまった現代人は、そこかしこで宣うのだ。


「…っぱ夏より冬だよなぁ。」


馬鹿げている!


彼らは言う。


「やっぱ夏の暑さは殺人的だよ。服だけじゃどうしようもないし。冬の寒さは最悪着込めば耐えられるっしょ。」


無理だが?


私の場合、どれほど着込んでも染み入るように入り込んでくる寒気が体温を奪い去る感覚がある。


冬の空の下に30秒もいれば指先は氷の様に冷え切り、触れたもの全てを凍り付かせん勢いである。


それに、常識的な量のダウンやジャケット如きでは、物理的に冬の寒さを乗り越えることはできない。


日本の冬の平均気温は最高が10℃、最低が2〜3℃である。


ここは冬派にハンデとして最高気温の10℃を選んでやるとして、外気温と体温の差はおおよそ26℃である。


たとえ服を何重にも着て肌の表面温度が20℃前後になったとて、肌からは常に16℃の熱が失われ続けているのだ。


この失われた熱が周囲の気温を5℃くらいあげてくれればまだ救いはあるが、残念なことに地球は広大故、その救いが受理されることはない。


結果として、体温の収支が常にマイナスの冬は時を追うごとにじわじわと私の指先から熱を奪っていく。


先ほども述べた様に冬とは死の象徴である。


冬が侵食した指先は殆ど全ての能力を失い、私の命令に対して緩慢な動きしか返さない。


やがて体の芯まで凍えつかせる寒さに体は救難信号として鼻から滝の様な鼻水を分泌し、冬常備しているティッシュにて鼻をかもうと思ったら握力が入らない。必死の思いでなんとかティッシュを取り出し、良い具合に持ってマスクを下にずらせばもうその中身は大洪水、冬の乾燥にはちょうど良いわねなんて考えられるほどの余裕は既に冬の呪いが奪い去っており、これまた必死の思いでティッシュを取り出し満足に動かない指先で不均一に畳んだそれをマスクの中に置くところまでがワンセットである。


この間寒さに縮み上がった末端の神経への苛つきをエネルギーに変換できるのならば、おそらく周囲の気温を5℃以上あげることも容易だろう。


もしこの手が金属でできていたのなら、ごく低温下で超伝導体と化し、神経はこれまでにない活発さを見せるはずであるのに肉でできた手のなんたる不便な事か。


とはいえ、もし人間の体が金属でできていた場合、彼ら冬信者の言う殺人的な夏の暑さにそれが晒された時、体の表面温度は裕に80℃に達し、ポケットに手を突っ込めば炎上、スマホに触れば爆発、卵を手に取れば瞬時に爆弾と化すなど様々な不都合が考えられる。


そう考えると、彼ら冬信者の言い分も正しいように思えてくるが、これら反論は、たった一つの真実によって破綻する。


それは、人間は金属でできている訳ではない。と言う点である。


確かに、人間が金属でできているのなら夏はたちまちそこらじゅうで爆発炎上が巻き起こり、一瞬にして現代文明は崩壊するであろうし、冬は極低温化で超伝導体と化した人類が更なる飛躍を遂げるであろう。


しかし、人間は金属で出来ていないのだ。


これは、反証的に人類にとって真に恐るるべきは冬であると言う理論の裏付けになり得るのではないか。


この人類非金属証明とでも言うべき革新的な冬の優位性立証は、今後人類に多大な影響を及ぼすであろう。


もし、この人類非金属証明によってノーベル賞を受賞した暁には、その賞金で冬脱却党を設立する予定であるから、是非とも我が党に投票していただきたい。

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