10/30 前倒し
肩を叩かれた。
ひどく曖昧な夢を見ていた中で、妙に現実的な感触に意識が覚醒に移行しつつあったものの、重度の眠気は現実に戻る事を拒否した。
「ねぇ」
粘ついた声がした。
夢だろうと思った。
夢現の中で、その名残が現実まで出張ってくることはよくある事だと知っていた。
「おきなよ」
粘ついた声と共に肩を揺すられた。
尚も私は夢だと思っていた。
夢であるべきだと思っていた。
何せ私は一人暮らしだ。
いるわけがない。
こんな気色の悪い声をした奴が現実に立っているわけがない。
幻聴を振り払うように腕を振り回して、骨張ったそれに手が当たって、何よりも実物感が伴った生ぬるい肉感に観念して目を見開いた。
妙に痩せ細った男が眼前1cmに顔を近づけていた。
骨と皮で出来たような男だ。
それを繋ぐ筋繊維は溶けたように解け、骨にぶら下がるように肉が張り付いていた。
凄まじい嫌悪感と共に顔が引き攣る感覚を覚えながら、妙に客観的な視点が飛び込んできた。
肋の浮いた背中と、白いブリーフが上から見えた。
叫び声をあげて飛び上がった膝が男の腹にめりこんだ。
滑っとした感触と皮と骨の間に潜り込む感覚。
気色悪さの中でベッドから飛び退き、尚も私に迫ろうとする腕を掴み上げた。
見た目通り、そこにほとんど力は入っていなかった。
「ど、どうやって……」
私の困惑する声に男は黄色い歯を粘着かせながら言った。
「入れてもらったんだ。」
手には鍵がぶら下がっていた。
…
そこで目が覚めた。
部屋はいつもと様相が変わらず、外は既に明るくなっていた。
早鐘のように脈打つ心臓を落ち着かせていると、部屋に母が入ってきた。
滝のように汗を流している私を前に困惑しているようだった。
「暑かった?」
母は聞いた。
「いや……」
なんとは無しに外に目を向けた。
外を見ると、2人の女がベランダに侵入していた。
手には食べ終わった弁当が持たれており、1人がその食べかすを私のベランダに捨てると、もう1人を手招きして捨てた地点を指差した。
慌てて窓の外に出た。
「いやいやいや……ちょ、は?」
弁当を捨てた女の腕を掴み上げ、呼び込まれていたもう1人の腕も掴んだ。
女達は小さな声で何かを呟いた。
「何?」
私の声に初めてこちらを向いた女の顔は、骨に肉がぶら下がったような様相だった。
ギョッとして母の方を振り返ると、母は窓枠に張り付いて、その骨に肉がぶら下がったような顔をむけていた。
……
…というのが今日見た夢であり、時刻は既に3時を回って日付は10/31になっており、ハロウィンのホラーってそういうんじゃなくない?
という思いのもと書かれた10/30の日記である。




