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220/311

8/8 凪

何がなんでも自由席を勝ち取るべく始発の電車に乗り込み新幹線を待つ午前6時。


日が開けて間もないホームは未だ僅かな涼感を保ってはいるものの、徐々に本腰を上げてきた太陽はそれすらもすぐ奪い去ろうとしている。


2泊3日とはいえ夏、着替えは多めに…いや、でもキャリーケースはあまりにも怠い。


午前4時頃に脳内で繰り広げられた言い争いの折衷案として持ち込まれた10kg弱のリュックサックを足元に、前から3番目の場を係員さんに誘導されつつも死守し続ける。


しかしあれですね。


自由席争奪戦は心の中の何かを徐々に削っていくような感覚がある。


それは「寛容さ」であったり「良心」であったり、「牛乳パックを抱えてホームをダッシュして来たあのお子のために場所を開けてあげましょう」と言った善性で、実際当時の私の頭の中を占めていたのは「狭量」であったり「野心」であったり、「合流っつっても限度があるでしょーが、4人はやりすぎ。いくら家族といえど。あとその牛乳パックは本当になに?」といった荒れようであった。


そんなこんなでヤキモキすること1時間。


ようやく到着した新幹線になんだかんだで余裕で着席でき、ほっと一息つく。


通路に立つ他乗客の視線を寝たふりをしたり課題をやるふりをしながら回避しつつ、流れ行く車窓外を眺める。


視線回避策の施行の一つ、ヘッドホンから流れるFreddie Saidのドラムと等間隔な電線の撓みがシンクロシニティ。


争奪戦と罪悪感は緑と優越感に徐々に薄れていく。


やはり善性とは余裕に裏打ちされた上から目線だったのだろうか。


凪いだ心を手に入れました。


凪いでいるので、「今後年1で並んでいるところに横入りされてトラブれ」と言う呪いもあの家族にはかけていません。


かけていません。

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