九 その声よ
……やばい、どうしよ。
どうにかブラックサンタさんになるのは止めないと!
神界から届く音楽は鳴り止まない。
ちょっと、そんな呑気に歌ってる場合じゃないのに!
「サンタさん、聞こえてますか!」
「トナカイちゃんよ、ギリギリ聞こえておるぞ。それと、何をしてほしいのかもわかっておる」
なんと、あのサンタさんが今だけ頼り甲斐がある!?
「じゃあ、それをお願いします!」
「あぁ。良い子よ、良い子よ、眠れ〜!」
そう言いながらサンタさんは両手を天に掲げ、キラキラと輝く星のような光の粒を町全体にかける。
すると、子供たちは再び静かになり、眠りにつく。
「流石です、サンタさん」
……と思ったのだが、音楽が鳴り止まない以上子供たちがまた目覚めそうになってしまう。
「あぁ!やっぱり起きちゃいそうですよ」
「なんじゃと?……トナカイちゃん、助けておくれ」
サンタさんは懇願する。
結局いつも通りの流れだ。
……といっても、ムーサの美声を止めなきゃ話にならないよ!
でもどうやって?
僕もサンタさんみたいに誰かに頼みたいよ!
僕は解決策を思案する。
そのときのことだった。
「トナカイ、サンタ、よく聞いてください」
突如どこからか誰かの声が響いた。
あたかも「その声よ、しかと耳にした」というような態度だ。
僕もサンタさんもビクッと反応する。
もしかしてこの声は……
「ポセイドン様!」
僕が首に掛けていた、ポセイドン様からもらった紋章が光っている。
恐らく、これで伝達してくれているのだろう。
「はい、ポセイドンです。ムーサの件については大変ご迷惑をおかけしています。今アポロンを向かわせたので、もうそろそろ鳴り止むかと」
おお──っ!!
なんていい神なんだ!
「ありがとうございます、ポセイドン様!もう、大変ありがたい限りです!」
サンタさんもポセイドン様の気を利かせた行動に感謝する。
「おお!神よ、神が救ってくれた……!」
「あなたも神ですが……」
サンタさんは理性を保つことすらできなくなっちゃったのかな?
でもアポロン様がムーサを止めてくれれば!
そんなときちょうど神界からアポロン様の声が響いた。
どうやらムーサたちのところに着いた様子である。
「ちょっと、ムーサ!音が地球にも漏れてるよ!」
「あら?私たち、ちゃんとドアは閉めたわよ?」
会話が神界から漏れてくる。
「いや、今開いていたじゃないか」
その声でムーサたちがざわつき始める。
その声すらも美しい。
「まあ!ほんとうね。でも誰が開けたのかしら」
「いえ、お姉様、そんなことはどうでもいいのですわ。アポロンがせっかく来てくれたのですし、前の音楽競争の続きでもしましょうよ」
「そうね、そうね」
「名案だわ!」
「ほらそこに座って」
……おっと?
なんか雲行き怪しくない?
気のせいかな。
「たしかに、続きで終わってしまっていたな。せっかくなら今やろう」
「アポロン様!?」
これにサンタさんもポセイドン様も呆れてしまう。
アポロン様は音楽の神でもある。
その影響が出てしまったか……。
「今すぐアテナを向かわせますね。アポロンには今度きつく言い聞かせておきます。……っと、もうアテナは向かっていたようですね」
耳を澄ますと、ムーサたちがいる神界に誰かが来たようだ。
「ムーサ!あ、ちょうどいい、アポロン!暴れん坊を見なかったかしら」
どうやらこの声がアテナ様らしい。
同じくオリンポス十二神。
「いや、見てないよ」
「そう。残念ね」
……それにしても、暴れん坊とはなんなんだろう。
「で、アポロンはなんでここにいるの?」
アテナ様が聞く。
ここでようやくアポロン様が使命を思い出した。
「あ、僕ムーサの音楽を止めるために来たんだった」
だがその一言でムーサたちは動揺する。
「なんですって?」
「信じられない」
「そんなのごめんよ」
再び混乱に満ちる神界。
僕たちはそれを音で察した。
「ちょっと聞いてくれ!君たちがドアを開けていたせいで音楽が地球に漏れたんだ。それで地球では今クリスマスなの。サンタたちが頑張っているのに、この音楽で子供たちが起きちゃいそうでピンチなんだよ。だからさ、サンタたちに手助けしてやってくれよ」
あぁ、なんて完璧な説明!
これでムーサたちも納得してくれるよ。
「そうね。それなら仕方ないわ」
「サンタたちがかわいそうだもんね」
そこでアテナ様がこう言った。
「あ、いい事思いついた!」
どうしたんだ?
「ここでドアを開けたまま子守唄を奏でれば、子供たちがスヤスヤ寝てくれるんじゃないかな?」




