七 使命を忘れたサンタさん
僕たちにとって地獄のようなクリスマスが今年も始まった。
いや、クリスマスイブか。
キラキラと光る星々に見下されながら、今年もソリを引くのだ。
「トナカイちゃん、まずはこのあたりで止まっておくれ」
「わかりました!」
少しずつ高度を下げていくと街の輪郭が濃くなっていく。
子どもたちがぐっすり眠っていることがよくわかる。
「それじゃあやっちゃってください、サンタさん」
サンタさんは「ウム」と頷き、袋の中に片手を入れる。
袋の形を次々と変えていく。
それが数秒続く。
手を出したかと思えば、まだゴソゴソする。
……まだ続く。
僕は嫌な予感がした。
あの袋は特殊な袋で、プレゼントを入れていなくてもいい。
変わりにお手紙を取り出して振り撒けば、それが粉になって、そしてプレゼントとなり子供のもとに届く。
プレゼント工場であらかじめプレゼントを作って、お手紙とリンクさせておけばの話なんだけど。
いや、まさかね。
そんなまさかだよ。
プレゼントを作っていないなんてことはないはず。
「サンタさん、まさかプレゼントを作っていないのですか?」
そう言われたサンタさんはわかりやすく慌てる。
「い、いや、そんなことはないのじゃ」
そう呟きながら、袋の中を覗いている。
そしてサンタさんは、一つの紙束を取り出した。
「この束はここの地域の手紙じゃよな、トナカイちゃん」
分厚い紙の束を見せられる。
その住所は間違いなく今いる街の子供たちの手紙だった。
「はい、その通りですね。それをいつものように粉にすればいいじゃないですか」
「……それが、粉にならないのじゃ」
そんなバカな!?
ついに魔法も忘れちゃったの!?
いや、そんなことはないはず。
サンタさんが間違えているんだよ、きっと。
「も、もう一度試してみてくださいよ」
「いや、試すも何も、自動的に粉になるはずなのじゃよ」
「と、というと?」
しどろもどろしながら説明される。
まとめると、いつもはその地域の手紙の束に触れた瞬間に粉に変わるそうだ。
そしてそれを振り撒いていたのだという。
だけど、今回はそういうわけではないみたいだ。
粉にならない手紙を見て、サンタさんはすっかりやる気を無くしてしまった。
「……もうダメじゃ。プレゼントを配ることすらできないのじゃ」
「まだ諦めないでください、サンタさん。きっとどうにかなりますよ!」
僕が慰めの声をかけてもなおサンタさんは落ち込んでいる。
僕は解決策を考える。
その間もサンタさんはぶつぶつと弱音を吐く。
「魔法も使えなくなっておるとはのう。ワシももうダメじゃ。そもそも、なんでプレゼントなんて配らないといけないのかのう。なんのためにこんな夜に地球を駆け回っているのじゃ。こんなことをする意味もないじゃろう」
「ちょ、ちょ、ちょ!サンタさん元気出しましょうよ!」
サンタさんからそんな言葉が出てくるなんて……!
一大事だ。
まさか、忘れん坊になって使命も忘れちゃった!?
だから、魔法も使えなくなっちゃった!?




