五 地獄の支配者
そんなこんなで僕は、夜摩天に向かう。
今は、地球の時間では12月23日の午後4時みたいだ。
夜摩天に着く頃には24日になっているくらいかな。
そこからサンタさんのところに帰るとなると24日の午前8時くらいになる。
とりあえずは間に合うな。
僕は少し安心した。
実は、もしかしたら今年はクリスマスプレゼントがなくなってしまうかもと、ちょっと思ってたのだ。
約八時間後。
周りは明るく、地面には深さ1センチほどの澄んだ水が張られている。
至る所に青い蓮の花があるが、どれも花は閉じている。
ここが夜摩天。
ここも初めて来たが、なんとか着いた。
思ったより綺麗な場所だな。
なんかこう、もっと炎が燃え盛っていて暑い場所なのかと思ってた。
僕は歩いていく。
地面に足をつける度に水紋が広がっていく。
しばらく歩いていると、向こうに大きな鏡と何かの行列、そして閻魔大王様が見えてきた。
そのあたりでは、水の上で炎が燃え盛っている。
そこで僕のところに、閻魔大王様の使いの1人──牛頭が寄ってきた。
「サンタの使いよ。何か御用であるか?」
そう言う牛頭。
「えっと、閻魔大王様とお話がしたいんですけど良いですか?」
「う〜ん、そんなことを急に言われても出来るわけなかろう。歓迎の準備もしてないのだ」
「あ、いえ歓迎などしてもらわなくていいですよ。お話がしたいだけなので」
「そう言われても、すぐには出来ない。何しろ閻魔大王様は忙しいのだ」
う〜ん、まあそうだよね〜。
「それは承知してますが、どうしても今すぐ会わないといけなくって」
僕がそこまで言ったところで、これまた使いの1人──馬頭も寄ってきた。
「サンタの使いよ。その首に下げているのは、ポセイドン様の紋章じゃないか?」
「あ、そうですよ。前にポセイドン様と会ってつけてもらいました。」
紋章には、ポセイドン様の三俣の鉾と馬頭の鉄叉が描かれている。
「なら話は早い。閻魔大王様に話をつけておくから、ここで待っていてくれ」
「あ、ありがとうございます」
なんでそうなるのかはわからないけど、閻魔大王様に会えるのならいいか。
牛頭馬頭のどちらも閻魔大王様の方へ戻り、何かを話している。
そして、牛頭馬頭のお二人が戻ってきた。
「閻魔大王様との面会の許可が降りました。ご案内いたします」
「ありがとうございます!」
僕は二人に着いていく。
着いた場所は、人間界でいう神社の本殿のような建物だった。
その中の閻魔大王様の部屋に案内される。
閻魔大王様は豪華な椅子に座って僕の話を促す。
僕、今から裁かれるのかな。
そう思うほどに威圧感がある。
堂々と前に座られると怖い。
「あ、えっとこの度は急な──」
「いや、そういうのはいい。本題を話してくれ」
「あ、わかりました」
怖いよ〜。
「えっと、どうしても閻魔帳を貸してほしくてここに参りました。現在、地球での時間は12月24日の午前0時ほどで、急がないとクリスマスに間に合わないんです」
その言葉を聞いた閻魔大王様は少し驚いた。
「なるほど、そうであったのか。何に使うかは知らないが、急いでいるのならすぐにでも閻魔帳を貸そう」
「ありがとうございます!」
そこで閻魔大王様が呟く。
「もとはといえばこれはサンタのものだからな」