三 全知全能の神
「お、やっと来たか。サンタの調子が悪いみたいだって聞いたぞ?その理由を聞きに来たのか?」
ゼウス様がソファに横になりながらそう話す。
「知ってるんですか?」
僕は思わず食い気味に言う。
「もちろんだ。とりあえず中に入るといい」
「し、失礼します」
僕がその部屋に入る。
すると、アポロン様は静かに扉を閉めて帰ってしまう。
信頼できそうだったからいてほしかったんだけどなぁ。
僕はゼウス様の前まで言って座る。
すると、ゼウス様が近づいてきて、僕の頭をわしゃわしゃしてくる。
どいつもこいつも、僕のことをペットだと思っていやがる。
「そんなに固くならないで、リラックスして〜」
「あ、あの僕ペットじゃないので、その、──」
「ん?私にとってはペットのようなものだぞ?」
「い、いや、僕一応でも神の使いなんです〜!や、やめてください!」
「も〜う。せっかく可愛いのにな〜」
なぜか不服そうだ。
あぁ、こう言うときにアポロン様がいれば……
ゼウス様が思い出したかのように話し始める。
「あぁ、それでトナカイちゃんは理由を聞きに来たんだったよね」
来た理由がいつのまにか変わってしまっているな。
といっても、そういえばまだ誰にも言ってなかった気がする。
「あ、それもそうなんですけど、地球の子供達の行動がどうだったかも聞きたいんです……」
僕がそう言うと、ゼウス様は手を顎に当て考える。
「ふむ。そういうことなら、まず先にそちらに答えよう」
「ありがとうございます!」
ゼウス様が堂々としながら僕に告げる。
「まず、結論から言うが、私はそれを覚えてない!」
「え」
な、なんだって〜!?
あの、全知全能の神が、ゼウス様が、知らないなんてことあっていいのか!?
「そんなことあります?失礼ですが、嘘ついてますよね?」
ゼウス様はずっと堂々としている。
「まあまあ、そう慌てるでない。いくら私が全知全能だからといって、それを覚えてるわけではない。ましてや、地球にいる全ての子供の直近一年の行動、となると、覚えるのも大変なのだ」
まあたしかに全知全能なだけで、覚えてるかどうかはまた別なのだろう。
知ろうと思えば知れる、みたいな感じ?
「そう言われたらそうですけど、でもなんか、ほんとは知ってるとかないんですか?」
「ない」
「ない?」
「ない」
キッパリ言われてしまった。
「そもそも、何が悪で何が善なのかすら私にはわからないのだ。誰が良い子か悪い子かなど私にはどうでもよいからな」
全知全能の神といえど、人の善悪はわからなのか。
意外だけど、よく考えてみれば不思議ではない。
「それもそうでしたね」
僕は落ち込んで下を向く。
すると、ゼウス様がこう言ってきた。
「だがしかし、知る方法はある」
「ほんとですか!」
僕の頭が自然と上がる。
「ほんとだ。それに、それを使えば善い悪いも書いてあるから私に聞くより良いだろう。ふふ、私も馬鹿ではないのだ」
「流石です!それでどうすれば良いんですか?」
僕は次の言葉に期待する。
「うむ。ズバリ、閻魔大王の閻魔帳を見ることだ!」