十一 雷
「やっほ〜!トナカイちゃん、それにサンタ!元気〜?」
「ヘルメス様!」
助けが来た……!
「それどころじゃなくて今──」
「わかってるよ。だから僕が来たんだし」
ヘルメス様がアレス様を蹴る。
アレス様は後方へ吹き飛んでいく。
そしてヘルメス様はソリのヘリに座る。
「さあ、レッツゴー!今のうちに撒いちゃおう!」
「ちょ、ちょっと何勝手に乗ってるんですか!重くなるじゃないですか」
「いいから走ってみなよ」
言われたとおり走ってみる。
足を前に出した瞬間、いつもより体が軽い気がした。
そして一歩でぐんぐん前へ進むことができる。
「おおー!速いぞトナカイちゃん」
「なんだか体が軽いです!」
驚く僕たちをみてヘルメス様は笑う。
「アハハッ。当たり前でしょ、僕を舐めないでくれる?」
いや、前僕から何かを盗もうとしてたやつが何言ってるんだ?
「僕は流通の神なんだ。旅人にも加護を与えられるよ。それと僕足が速いからね。あんなやつなんて簡単に撒けるよ」
「意外と凄いですね」
「意外とは余計だな!」
ヘルメス様の加護のおかげで速く走れる。
アレス様に追いつかれることもない。
……なのだが、アレス様も喰らいつく。
その上たとえ撒けたとしてもプレゼントを配るために戻らないといけない。
「サンタさん、このスピードでプレゼントを配れますか?」
「む、無理なのじゃ。このスピードの中袋の口を開けようものなら手紙が飛んでいってしまう」
……どうしよう。
全速力で走ればアレス様に追いつかれる心配はないけど、プレゼントを配ることはできない。
アレス様が神界へ帰ってくれなきゃ困るなぁ。
「僕が代わりに配ってこようか?」
「ヘルメスでは手紙をプレゼントに交換することはできないじゃろう。それに加護がなければワシらが殺されてしまう」
「あー、せっかくプレゼントを盗めると思ったのになー」
「ちょ、ちょっと!」
ヘルメス様はいたずらっ子のように笑う。
「アハハッ。今のはあんまりいい冗談じゃなかったね。で、どうしようか。アイツ結構強いんだよねー」
ヘルメス様が後ろを見ながら言う。
「サンタさん、先にこっちの街のプレゼントを配っておきましょう」
「そうじゃのう」
僕はスピードを落として降下する。
再び黄金に光る粒が街を覆う。
不安はあるがひとまずプレゼント配りに集中することにする。
ソリのヘリに座るヘルメス様は足をブラブラさせてながら何かを思案している。
少し経った後、急にヘルメス様が声を上げた。
「あ、アレス来た」
「なんじゃと!?」
「アハハッ。大丈夫だよ、アテナ来たから」
槍をもってこちらに突進してくるアレス様。
僕たちに接近してきたそのとき、横から鋭い光線が横切った。
それに当たったアレス様は槍で受け止めつつも、光線とともに横に流れていく。
「やっと見つけたわ、アレス。ちょっと暴れすぎなんじゃないかしら」
声の方を見れば、弓を持った神様がいた。
あれがアテナ様。
「サンタたち、ここは私に任せてちょうだい。……ってなんでヘルメスがいるのよ」
「アハハッ。遅かったね」
「うるさいわ」
吹っ飛ばされたアレス様が戻ってきて、アテナ様を襲う。
アテナ様もそれに気づき腕で受け止める。
「よくも邪魔したな!」
「アンタが妙な動きをするからでしょ」
お互い睨み、空気がピリつく。
「さあトナカイちゃん、今のうちに逃げちゃおう!」
「は、はい!アテナ様、ありがとうございます!」
感謝しつつ、僕たちはこの場を離れる。
前足を出したそのときだった。
突然黄色の強い光が鋭く光る。
間もなくゴロゴロっと大きな音が鳴る。
突然の出来事にこの場にいた全員が驚く。
こんなときに雷!?
「あ!ゼウスが怒ってるぞ!」
ヘルメス様の呑気な声があたりに響く。
だがその言葉によってこの場に電撃のような衝撃が走った。
「ゼ、ゼウス様!?」
「そうだよ、この雷は絶対ゼウスだよ!」
「たしかに、ヘルメスの言うとおりだわ……」
「それがどうした!ゼウスは関係ないだろ!」
アレス様がそう叫んだ瞬間、突如低い声が響いた。
脳内に直接語りかけられているかのような気分だ。
「何地球に影響を与えているのだ?地球に顕現していいだなんて誰が言った?」




