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忘れん坊のサンタさん  作者: しあわせ たぬき
第二章 使命を忘れたサンタさん
10/12

十 暴れん坊

「あ、いい事思いついた!」


どうしたんだ?


「ここでドアを開けたまま子守唄を奏でれば、子供たちがスヤスヤ寝てくれるんじゃないかな?」


この提案には、僕もサンタさんもポセイドン様もハッとした。


「サンタさん、あとちょっとで解決しそうですよ!」

「そうじゃのう。もう少し耳を傾けてみようじゃないか」


その会話の続きを聞くべく、ワクワクした気持ちで耳を澄ます。


「じゃあ、私たちで子守唄を奏でましょう。あ、アポロンももちろん入るのよ」

「え」

「そうね、たくさんいた方が楽しいものね」

「そうだわ!」


逃げられなかったアポロン様。

かわいそうに。

でもなんだかんだで乗り気だ。


「それじゃあ、私は暴れん坊を追うから、またね〜」


アテナ様は今のうちと言わんばかりに音楽ステージから掃けていった。


そして程なくして滑らかでゆったりとした音楽が聞こえてくる。

それはここから遥か遠くにあるステージでの演奏だが、子供たちへとしっかり届ける。

夜空に光る星々と共に音楽を聴く。

とても安心できて、落ち着けて、なぜか視界が暗くなっていって……。


──って危ない!

僕まで寝るところだった。


ハッと目を覚まし、子供たちの様子を見る。

子供たちも気持ちよさそうな顔でぐっすり寝ている。


ふう、ひとまずなんとかなった。


「サンタさん、子供たち、寝てくれましたよ」


そう言ってサンタさんの方を見れば……。

案の定、サンタさんも寝ていた。


流石です、サンタさん。


だがサンタさんの髭は白くなっているし、目つきも優しい。

ブラックサンタさんにはならなくて済んだかもしれない。

僕は角でツンツンとサンタさんを突く。

すると、僕と同じようにサンタさんもハッと目覚める。


「ここは誰じゃ!私はどこじゃ!」

「逆です、サンタさん」


サンタさんは再びハッとなる。


「ホッホッホ。うっかりしておったわい。子供たちもずいぶんと眠っているようだし、今のうちにプレゼントを配ろう」

「はい、そうですね!」


ようやくいつものクリスマスになってきた。

またいつものようにプレゼントを配りにいくのだ。


「ポセイドン様、ありがとうございました!アテナ様にもアポロン様にも、僕の感謝を伝えておいてくださいね!」

「承知した。これからも頑張るのですよ」


その声を聞きながら、僕は再び空を駆ける。




夜空とムーサたちの子守唄の下で、僕は懸命にソリを引く。

サンタさんは次々と手紙の束を粉に変えて、プレゼントを届けていく。

波瀾万丈なクリスマスだけど、誰かの協力で成り立っている。


四分の一以上を届け終わり、順調に進んでいく。


……まだ四分の一!?


激務だが今日は頑張るほかないのだ。

サンタさんとも、約束したし。


必死にソリを引く。

そのときだった。

またもや事件が発生する。


「ちょっと、サンタが白いじゃないか!」


突如目の前に神様が現れた。

それは、アレス様。

オリンポス十二神の一柱で、戦いが超絶好きな神様だ。


それにしても、サンタさんが白くて何か問題があるのかな?


「どうしたんですか、アレス様」

「どうしたもこうしたも、なんでブラックサンタじゃないんだよ!」


なぜかお怒りになっているアレス様。

僕は事情を説明する。

ポセイドン様やアポロン様、アテナ様が助けてくれたという、一部始終を語って聞かせた。

すると、もっと怒り出す。


「なんでだよ!せっかく僕がドアを開けたのに」


なんだと!?

まさか犯人が目の前に!


ハッとして僕はサンタさんの顔を見る。

サンタさんも動揺しているようだが、目を閉じて何かを思案している。


「あーあ、せっかくブラックサンタと戦えると思ったのに。台無しじゃないか」


──なんだと〜!

サンタさんと戦うつもりだったのか!


僕は思わず「シャー!」と威嚇する。

それを見たアレス様は不服そうな顔をする。


「もうなんでだよ!なんで邪魔が入るんだ!なんで暴れさせてくれないんだ──ッ!」


そう言いながらこちらに突進してくる。


──八つ当たり!?

避けないと!


僕は急いでソリを引いて突進を避ける。

それでもアレス様は止まらない。


「も〜う、サンタも絶対許さない!」


それを聞いたサンタさんは意外と冷静に諭す。


「まあまあ、落ち着いておくれ。自分の感情を他人にぶつけても何も解決できない」

「うるさい!」

「戦いなどやめて、平和に生きようじゃないか」

「黙れ!僕は戦いの神なんだぞ!使命を果たさなきゃ、やってられない!」


再び突進してくる。

今度は明確な殺意がある。


「トナカイちゃん、逃げてくれ〜!!」


サンタさんに懇願される間もなく、僕はソリを全速力で引く。


サンタさんを襲おうとするなんて許せない!

よくないぞ!


また違った意味で夜空を駆け回る。

アレス様も負けじと追いかけてくる。


「トナカイちゃん、もうすぐそこまで来てるぞ!」


僕は更に速く走ろうとする。

だがこれ以上は速くならない。


……どうしよう。

このままじゃ追いつかれる。

やめてくれ!

もうこないでくれ!


アレス様がどこからか槍を取り出して、こちらに鋭い先を向ける。

サンタさんに一直線で突き刺そうする。

僕は寸前で横に移動して、なんとか避ける。

サンタさんには当たらなかったが、ソリにかすった。

だが最悪ではない。

その次もサンタさんに槍が刺さらないように回避する。


──どうしよう。

このまま張り付かれたら、いつかは避けきれなくなってしまう。

誰か、どうにかしてくれ!


その瞬間、サンタさんとアレス様の間に誰かが入った。

僕はその神様に見覚えがあった。


「やっほ〜!トナカイちゃん、それにサンタ!元気〜?」

「ヘルメス様!」


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