一 見守りを忘れたサンタさん
僕はサンタのアシスタントのトナカイ。
今はサンタさんがとあるゲームの名前を忘れてしまったらしいので思い出している最中だ。
「う〜ん、それならたぬき王国2じゃないですか?」
「それじゃ。たぬき王国2じゃったか」
サンタさんが思い出す。
「でもなんでそんな事を急に聞いてきたのですか?」
「はて、なんでじゃったかのう」
最近はずっとこんな感じだ。
でもなんとなく見当はつく。
「もしかして、クリスマスプレゼントのお手紙に、ゲームの正式な名前が無かったからですか?正式名称が無いとプレゼント工場で作り出せないですもんね?」
「そういえばそうじゃったのう」
「もう〜、しっかりしてくださいよ!」
「ほっほっほ。すまないのう」
サンタさんは呑気だ。
そこで僕は重大なことを思い出す。
「ところでサンタさん。ちゃんと子供達の見守りはしてましたか?」
「もちろんしておったぞい。なにしろ普段は暇だからのう」
「流石です」
ここで「はて、なんのことじゃ?」なんて言われなくてよかった。
「じゃあ今年はどれくらいの子がプレゼント貰えるんですか?」
「……はて、どの子が良い子じゃったか」
なぜ……?
なぜそうなる。
どうしてそうなった。
一度サンタさんに期待した僕が馬鹿みたいじゃないか。
「覚えてないんですか⁈」
「ふむ……覚えてるはずだったんだけどのう」
サンタさんがぶつぶつと言い訳をする。
これは覚えてる“つもり”ってやつですか。
一番良くないやつだ。
「サンタさんどうするんですか?もう12月23日ですよ!」
サンタさんが悩んだ末に、何かを思いついたみたいだ。
あ、これはまずい予感。
「う〜む。それをなんとかしてくれないかのう?」
予感的中!
「またですか?」
サンタさんが、いや〜、だって〜、とおねだりしてくる。
「トナカイちゃんはしっかり者だし〜、いつも頼れるから〜、解決してくれないかなあって?」
毎度毎度かわいくおねだりされる。
そしてなんだかんだで僕が解決しにいく。
いつもの流れだ。
「わかりましたよ……。僕がなんとかします。クリスマスに間に合わせれば良いんですよね?」
僕が渋々そう言うと、サンタさんが目を輝かせる。
「ありがとう!もちろんそれで良いぞ!いや〜、やっぱりトナカイちゃんは頼れるな〜」
そうやって僕を褒めてくれる。
褒めてくれるのは悪くない。
「それで、どうしましょうか。解決するって言っても、方法が思いつきませんよ」
「そうじゃのう……」
二人で悩む。
子供達の行いが分かる物。
そんなものがあるのか?
……あ、ここには全知全能の神様、「ゼウス」様がいるんだった。
ゼウス様に聞けばいいだろう。
「サンタさん。ゼウス様に聞くのはどうですか?きっと子供達のことも知っていますよ」
「なるほど。たしかにあのゼウスなら知っているじゃろう」
なんとかなりそうだ。
「よし、トナカイよ。全知全能の神─ゼウスに会って子供達の行動を教えてもらってくるのだ!」
「ハハー!」