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第ニ話:始まりの席次テスト

王立魔法学園・ルーメン学園。

入学式の翌朝、俺は訓練場に呼び出されていた。


新入生全員が対象の“席次テスト”。

これは、初期ステータスの測定と順位付けを行うもので、今後の生活環境や講義内容にも影響するという。


(でも俺にとってはどうでもいい話だ)


最下位でいい。

むしろ、最下位になりたい。


目立ちたくない。

それが、俺――クロウ・イグナートの行動原理。


この世界に転生して十年。

魔王・賢者・剣聖という三つの魂を宿した代償に、俺はあまりに強くなりすぎた。

だからこそ、偽名を使い、“一般人”として生きることを選んだのだ。


……なのに。


「おーい、特例くん! 試合前に説明あるから、こっち来てー」


俺を呼んだのは、指導教官の中でも特にえらそうな筋肉おじさん――ギルマン教官。

腕組みしながら、じろりと俺を見てくる。


「お前、特例枠で入ってきただろ?」


「ええ、まあ」


「じゃあ、覚えておけ。特例生徒は、学園の保護対象じゃない。期待枠だ。

それだけに、“使えない”と判断された場合は即退学だ」


「……は?」


「特に、試合放棄・意図的敗北、及び自己申告による能力制限行為は重罪。

ほかの奴らには許されるが、お前には許されん。わかったな?」


(…………)


頭が真っ白になった。


「……つまり、負けようとしたら……?」


「退学。お前が試合中にわざと負けたら、俺が書類にハンコを押すだけだ。以上」


(……まじかよ)


俺の目立たず生きる計画、開始3日目にして詰みの気配。



「第十三試合、クロウ・イグナート 対 レイガ・ストーンハルト!」


訓練場中央のリングに呼ばれる。

対戦相手は、脳筋の典型みたいな奴。

入学前から武道大会で優勝していたらしく、自信満々だ。


「オラァァァアアアッ!!」


吠えるように突進してくるレイガ。

その大剣は重く、速く、真正面から来るタイプ。


避けなければ潰される。

でも――避ければ目立つ。

受ければ吹っ飛ぶけど、退学になる。


(……くっそ、なんだこの地獄ゲー)


「開始ッ!」


審判の声が響いた瞬間、身体が勝手に動いた。

ギリギリでレイガの剣をかわす。

その勢いで、彼の足元に魔力をすべらせる。


「なっ……うわっ!?」


ぐらついた足元。

レイガは盛大に転倒した。


「試合終了! 勝者、クロウ・イグナート!」


静まり返る場内。

誰も、何が起きたかわかっていない。


(やっちまった……また“勝って”しまった)


「……ほう、面白いことをするじゃないの」


観客席から、アリシア・フォン・ヴァルグレアが意味深に微笑んでいた。


俺の胸中は、もうしにたい。



「……クロウ、だったな」


控室で、ギルマン教官が近づいてきた。


「まあ、心配するな。悪目立ちはしたが、やはり特例にはそれなりの“何か”があるようだ」


「……そうですか」


「ただし忘れるな。“勝ち方”も評価の対象だ。お前はすでに“注目枠”だ。気を抜くなよ」


(……抜きたいんですけど)


俺はまたため息をつく。


特例生という鎖は、思っていた以上に厄介だった。

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