表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/24

6,これ見よがしなため息と郁美

 長めの髪をなびかせ、風をまとうように部屋の中央まで入って来た彼女は、葉菜を見て笑顔で言った。

 

「あっ、新入りさん」


 葉菜は、思わず腰かけていたベッドから立ち上がる。

 

「三丘葉菜です」


「初々しくてかわいいね、一年生」



 葉菜が答える前に、見海が彼女の背中に声をかけた。

 

「淳奈、遅いよ」


 彼女が振り返る。

 

「カラオケ、盛り上がっちゃってさ。また瑠衣に嫌味言われちゃうね」


 そう言いながら、淳奈はあっけらかんと笑っている。見海は、お姉さんらしく穏やかに言う。

 

「葉菜ちゃんが待っているから、早くシャワーの準備してね」


「オッケー」


 そう言うなり、淳奈は制服を脱ぎ始めた。ブラジャーとショーツだけになった体を隠すこともなく、その姿のまま制服をロッカーにしまってから、おもむろに出した部屋着を着る。

 

 見てはいけないと思いながら、スタイルのよさに葉菜は釘付けになってしまったのだが、見海は慣れているのか、見向きもせずに髪を乾かす作業に戻っている。

 

 そこに、瑠衣が戻って来た。

 

 

 肩にタオルをかけた瑠衣は、淳奈に向かって言う。

 

「なんだ、帰ってたの。今日は門限に間に合わないのかと思ってハラハラしちゃった」


「ハラハラした? ははっ、そう。じゃ、葉菜ちゃんが待ってるからシャワー行って来るう」


 淳奈は、慣れた手つきで大きな巾着袋に着替えや基礎化粧品を詰め込むと、再び風のように部屋を出て行った。

 

「まったく、いい気なもんね」


 瑠衣は、閉まったドアを見ながら、これ見よがしにため息をついた。

 

 

 

 淳奈は、思ったよりも早く、髪をタオルで包んだ格好で戻って来た。

 

「葉菜ちゃんお待たせ」


 葉菜は、着替えの入ったバッグを抱えてベッドから立ち上がる。瑠衣が言った。

 

「場所はわかる? 二階のあっちの突き当りね」


「はい」


「洗濯機があるから、なんならシャワーを浴びる間に洗濯してもいいし」


「あっ、はい」


 なんだかんだ言っても、瑠衣はとても親切だ。

 

 机に向かっていた見海が、ちらりと振り返って微笑んだ。淳奈は、洗い髪をごしごしとタオルで拭いている。

 

 

 

 恐る恐るシャワールームのドアを開けると、テーブルに座って雑誌を広げていた女の子が、顔を上げてこちらを見た。くせっ毛らしい耳の下までの濡れた髪が、顔の周りでうねっている。

 

「三丘さんだっけ」


「はい」


「私も一年生なの。柴内郁美よ」


「あっ、よろしくお願いします」


 葉菜がぺこりと頭を下げると、郁美がにっこり笑って言った。

 

「学校は明日から?」


「はい」


「同じクラスになれるといいね」


「はい」


「今、洗濯しているところなの。この時間、混んでいることが多いんだけど、今日はたまたま空いていたから」


 シャワールームの個室が並んでいるのとは反対側の壁際に、洗濯機が三台置かれていて、今は二台が稼働中だ。そういえば、姉は、葉菜が家事をしたことがないことを心配していたけれど、結局ここでは、洗濯は自分でするのだ。

 

 彼女は続ける。

 

「何しろ、女の子がたくさんいるからね。あっ、私の部屋は、すぐそこの205号室」


「私は……」


「淳奈さんたちのところだよね。303だっけ」


「そうです」


 葉菜の言葉に、郁美がふふっと笑った。

 

「タメ口でいいよ。一年生同士なんだから」


「あ……うん」


 一年生だろうが何年生だろうが、葉菜は今まで友達がいなかったので、人との接し方がよくわからない。もじもじしていると、郁美が言った。

 

「シャワー、浴びてきたら? 髪が長いから、洗うの大変そうだね」


「そんなこともないけど」


 小さい頃から、ずっと長くしているので慣れている。 

 

 話していると、個室から、シャワーを済ませた人が出て来た。それを期に、葉菜も個室に向かう。

 

 

 

 ドアを開けてすぐのところには、脱衣所があって、その奥がシャワーブースだ。葉菜は、着ていたワンピースと下着を脱ぎ、裸になってシャワーブースに入る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ