弾切れの危機を救うもの
俺は新品の銃を手に、深い溜息をついた。
「うーん……」
せっかく手に入れた銃だが、問題は弾薬の少なさだ。今の手持ちたったの十五発。これでは心許ない。何かが起こった時に、この少ない弾でどうにかできるとは思えない。
隣から、リナが心配そうな顔で俺の手元を覗き込んできた。
「どうしたの?」
「銃の弾が心許ないかなって。これじゃあ、いざって時にどうにもならない」
リナは俺の手にある銃をじっと見つめ、それから何かを考えるように目を閉じた。
「……これ、もしかしたら作れるかもしれない」
俺は驚いてリナの顔を見た。
「え?本当に?冗談だろ?」
リナはにっこり笑うと、掌を俺に向けて開いた。そして、その白い掌に淡い光が集まっていく。光は次第に形を成し、数秒後には、本当に銃の弾らしきものが五個、きらめいていた。真鍮色の薬莢、先端の弾頭、どれもが本物そっくりだ。
「それっぽいな……使えるかな?」
半信半疑のまま、俺たちは試し撃ちをするために、この世界に来た時に降り立った森へとやってきた。人里離れた場所なら、多少の音を立てても大丈夫だろう。
マガジンにリナが作った弾を装填し、その辺の太い木に狙いを定める。心臓がドクドクと音を立てる。本当に撃てるのか?もし暴発でもしたら?様々な不安が頭をよぎるが、ここで臆していても仕方ない。
深呼吸をして、引き金に指をかけた。
「バン!」
想像以上の轟音が森に響き渡り、銃から弾が勢いよく放たれた。次の瞬間、強烈な反動が俺の体を襲う。
「うおっ!」
俺はまるで巨大な力に突き飛ばされたかのように、そのまま後ろに吹っ飛ばされた。背中が木に激しく打ち付けられ、鈍い痛みが走る。
「大丈夫っ!?」
リナが慌てて駆け寄ってくる
「悪いけど、治癒魔法をかけてくれないか……」
リナが俺の背中に手をかざす。淡い緑色の光が俺の体を包み込み、じんわりと温かい感覚が広がっていく。リナの治療魔法だ。
リナの魔法を浴びると、体の痛みが嘘のようにスッと消えていった。痛みを感じなくなった体を起こし、改めて目の前の木を見る。弾はしっかりと幹に食い込み、小さな穴を開けていた。リナが作った弾は、見た目だけでなく、威力も本物と変わらないようだ。
今日の残りの時間を使い、俺は銃の扱いに慣れるためにひたすら練習を繰り返した。最初のうちは、撃つたびに体が大きくのけぞり、時には後ろにひっくり返ってしまうこともあった。
しかし、リナが次々と弾を生成してくれるおかげで、残弾を気にせず練習に打ち込むことができた。リナは疲れた様子も見せず、俺が撃つたびに新しい弾を作り続けてくれる。その献身的な姿に、感謝の念が募る。
夕方になる頃には、最初の頃のように派手に吹っ飛ぶことはなくなり、なんとか尻餅をつく程度まで反動を抑えられるようになった。それでも、まだ完璧とは程遠い。体に染み付くまで、これからも練習を続ける必要がある。
「……もう、夕暮れか」
空は茜色に染まり、鳥たちがねぐらへと帰っていく。練習を終え、汗だくになった体を宿へと向かわせる。明日は、依頼していたバイクが改造されて戻ってくる日だ。森の中を駆け巡り、銃を撃ち続ける日々に備えて、早く宿に帰って休まなければ。新たな武器と、頼れる相棒であるバイク。この異世界での生活が、少しずつ現実味を帯びてくるのを感じた。
こんにちは
さて次はバイクが改造されて戻ってきます
どんなバイクになっているのでしょうか