アルカディア武闘会
道なりに進むこと二日。
遂に大きな壁が見えてきた。地図を見るにどうやらここはアルカディアという場所らしい。
リナが言うには魔法に強いところ。
建物も高くて大きな街だということが見て分かる。
街の中に入ると、今までとは違う景色に圧倒された。
人の量、物の数、通る馬車の台数。どれもが今までとは桁違い。服装や通る人たちも何だかすごく見える。何だか不安になって聞いてしまう。
「…ねえ。ここって自分たちがいて良かったの?」
「大丈夫じゃない?私もいるから気にせず行こうよ」
何だかお腹が空いてきてしまった。
「ドーナツってどっちのカバンに入れてたっけ?」
「そ、そっちじゃ無いかな…?」
「そうだったっけ…」
何だかリナの目が泳いでる気がする。
箱を見つけて取り出すと何だか不自然に軽い気がする。
その予感は勿論当たった。箱の中に残っていたのはカスだけ。
ゆっくりと顔を上げリナの方をもう一度見ると、不自然に吹けない口笛をしている顔があった。
「ごめんなさい!最初は少しだけって思ってちゃんとユウマにも残そうとしてたんだけどいつのまにかあと一つってしてたら無くなっちゃって…」
「へえ?ちゃんと取っておいてねって言ったんだけどなあ…悲しいなあ?楽しみだったんだけど。
ちなみにドーナツってたくさん食べると太るんだよ?」
「うっ。わかってます…」
…食べたかったなあ。
宿を取り、少しばかり部屋で休憩しているとドアが乱暴に叩かれた。
「おい!居るか!」
ドアが壊れるかと思うぐらい叩かれ、ゆっくりとドアを開けた。
「すみませんが人間違いじゃありませんか…?」
鉄の鎧を身につけて、いかにもな冒険者らしき人がドアの前に2人立っていた。体がデカく、とっても怖い。
「いいや、お前だろう。よく分からん鉄の塊に乗ってたのはお前たちじゃ無いか?」
「確かにそれはそうですが何の用で…?」
何だか警戒をすることしかできない。リナも後ろで杖を持って臨戦体制になっている。
すると隣にいた杖を持った魔法使いらしき人が話し始めた。
「やあ。いきなり乱暴に来てしまって悪かったね。
俺たちはここの街で冒険者をしているゼルと隣がゴードンだ」
身分証を見せられ確かにカードにそう書いてある。
するとゴードンが話しだす。
「お前たちに話がある。お前たちはここに闘技場があることは知ってるな?」
確かにここには闘技場がある話をどこかで聞いた気がする
「明後日、闘技場で大会があるんだ。ルールは簡単。何でもあり、殺したら勝ち。 わかりやすいだろ?」
リナが後ろで驚いている。
「そんな危ないことしたく無いですよ」
「なに、殺すと言ったが実際に殺すわけじゃ無い。
この街は魔法の街だから蘇生魔法で簡単に生き返れる。しかもちゃんとこの大会はギルドのお墨付きだ。」
確かに見せられた紙には大会についてとその端っこにギルドのマークが載っている。
「優勝賞金は金貨3500枚。どうだ?いかがだい?」
だが自分たちには前に競馬での優勝賞金が残っている。お金にはまだ困ることはないだろう。
「あいにくだけどお金には困ってないんです。」
「なーに、そのことは分かってる。金がないならここには泊まらないからな。もし勝ったらこの先王都まで連れてってやる。」
それはありがたい。この先はリナも自分も情報を持っていないのだ。
「それはありがたいけど俺たちが勝ったところでそっちに良いことがなくないか?」
するとゴードンがゼルに目配せをした。
「悪いがこの先は中で話させてくれないか?」
話だけでも聞く価値はある。2人を中に入れることにした。
「確かにさっきの話だけだと俺らにはちっとも徳がない、だがこの大会では裏賭博がされているんだ。
基本的には新参者が簡単に勝てるものじゃないからこの街の強い冒険者たちに賭けられる。
しかし俺たちはお前らがミトラの大会で勝ったことを知っているんだ。」
何ということでしょう。ミトラの競馬を見られていたではありませんか。
「あの大会のことを知っているのはこの街では少ない。お前たちがきたことを知ってこの話をしようと思っていたんだ。お前たちが勝ってくれれば俺たちは金が増える。お前たちは王都に安全に行ける。
どうだ?この話乗らないか?」
リナに目配せをするととんでもない勢いで首を縦に振っている。
ゴードンとやらも若干引いているじゃないか。
「参加しようと思う。どうしたら参加登録できるんだ?」
「ギルドで大会について聞けば参加できるさ。続きの話は明日しようじゃないか。」
満足そうにしてゴードンたちは帰って行った。
「分かった。ありがとう」
ゴードンたちが帰ると急に静かになってしまった。
リナはこちらをキラキラした目で見ている
「こんなに良い話をもらえるなんて私たち運がいいね。でも勝てるかなあ?」
まあ負けても損はそこまでないだろう。
「大丈夫だよ。俺たちにはバイクも、銃もダガーもそして魔法もあるんだから」
翌日、ギルドに向かい大会の参加登録を済ませた帰り、酒場に寄ってみると、あの二人がいた。
「ユウマじゃねえか、どうかしたか?」
「さっき登録してきた帰りなんですよ」
「そうか、とりあえず登録できたんだな。まだ話にはしばらくかかりそうだから話は後でまたきてくれ。」
すると奥からゼルがやってきた。
「おや、お二人さんこんにちは。何か食べていかれます?」
「ここってお二人の店なんですか?」
「まあそんなところです。普段は従業員に任せてるんですけど今日は久々に働いてますよ」
ゴードンからメニューと水が運ばれてきた。
昼時でお腹も空いてきているし、何か食べて行くことにしよう。
「おすすめをください」
「はいよ。」
やがてドリアみたいなものが運ばれてきた。
口に入れるとチーズみたいなものがとろけてとても美味しい。あっという間になくなってしまった。
食べ終わって少しすると二人がやってきた。
「お前らの倍率が確定した。116倍だ。まあ新参者だったらこんなものだろう」
116倍…ってことは300枚賭けたら34800枚!?
とてつもない金額だ、何だか実感がないな。
「全部で何人出場してるんですか?」
16組。トーナメント方式だから4試合したら勝ちだ」
4試合。行けるだろうか?
「まあ俺たちも応援してるんだ。頑張ってくれ」
「ありがとうございます。きっと勝ってきます」
承知いたしました。
ゼルとゴードンとの打ち合わせを終え、宿屋に戻った。部屋の窓から見えるアルカディアの夜景は静かで幻想的だが、その静寂がなんだか怖く感じる。
「…私、ちょっと怖いよ、ユウマ」
部屋に戻ってすぐ、リナが言った。瞳には普段の無邪気さが感じられず真剣に言っていることが分かる
「死んだら、本当に痛くないのかな。生き返るって言っても、一度死んじゃうのは…」
俺はリナから視線を逸らさず、冷静に言った。
「怖くないわけがない。俺だってそうだ。だが、何とかなるさ。今までも何とかなったんだから。」
「分かった。頑張ろうね、ユウマ」
リナは顔を上げ、決意を込めた瞳で俺を見た。
俺は恐怖を振り払うように、明日の勝利のために最後の準備に取り掛かった。
まずは、愛用のハンドガンだ。
「リナ、こっちのマガジンに、弾を詰めておいて」
リナは頷き、俺から受け取った予備のマガジンに、魔力で作った弾を丁寧に詰めていく。その手つきは真剣そのものだ。次に、懐から二本のダガーを取り出し、その刃を丁寧に磨いた。金属の冷たい光が、緊張した空気を反射する。
そして、最も重要な準備、バイクの最終調整だ。
リナは緊張した面持ちでバイクに近づき、エンジン部分に手を置いた。バイクに何かが流れ込んでいることは自分でも分かる
数分後、リナがゆっくりと目を開けてこっちを向いて笑った。
これで準備は全部終わった。
準備は完璧なのに、俺は一睡もできなかった。生き返るとはいえ、一度でも死ぬ可能性があるのだ。怖くないわけがない。
俺はベッドに横になっても目を閉じることができず、天井を見つめていた。隣のベッドでリナは静かに横になっている。きっとリナも明日のことを緊張しているのだろう。
俺たちはいつの間にか命を懸けた大勝負に巻き込まれてしまった。すべては王都への安全な道、そして、この世界を生き抜くための圧倒的な資金を手に入れるためだ。
俺は静かに立ち上がり、窓の外の月を見た。
「こんなところで死にたくないな。まだ見損ねてるアニメがたくさんあるんだ。」
俺は静かにそう心に誓い、夜明けを待った。
明日。中心の闘技場で戦いが始まる。
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久しぶりに描いたのでちょっと文章変かもです




